腐った妄想の吐きだし口。
現在は聖闘士星矢の蠍座のミロのハマっております。
2016/04/09 (Sat)23:36
このところブログサボりまくりでした。本当、ネタは浮かぶんだけど文章にする気力がなくて(=_=)
ミロとカミュの出会い妄想。この二人の出会いは何通り妄想しても飽きないです。
孤児院から聖域と呼ばれる場所に引っ張ってこられて5日目。早くもミロは、この場所に嫌気がさして、脱走を試みた。
日の出よりも早く起きるのは、孤児院の生活で慣れている。部屋の中を漁り、下着を2枚と薄手のシャツ、その上にセーターを着こんでコートを羽織る。手袋とマフラーも忘れずに。逃亡生活に備えて昨日夕食の際に盗み出した三つのパンと一切れのハムをハンカチに包んでコートのポケットにしまった。
孤児院からミロが持ってきたのは、最低限の下着と毛玉だらけの着古したセーターだけだった。それだって優遇された方だ。孤児たちに自分の持ち物はなく、全てが院のものだから。だから孤児のミロに、必需品として衣服を、特に上質なコートを買い与えてくれた聖域の人々はきっと悪い人ではないのだろう。何が嫌だったのかと聞かれると、はっきりとはわからない。だた何かを決めつけられるような、大人たちの視線や気配に子供ながらも異様なものを感じ取ったのだ。
『ゴメンね』と呟き、ミロはそっと窓から外へと飛び出した。
窓の外には薄暗い森が広がっている。よく分からないけれど、ここを抜ければ街に出れる気がした。
夢中で走った。途中、何度も木の根っこにつまずいて転んだ。元々継だらけのズボンは簡単に破れて、膝に血が滲んだ。ミロの瞳に涙が浮かぶ。だが、ここから逃げるためには泣いている暇はない。泥だらけの手で、瞼を擦ると土のせいで余計に目が痛くなった。けれども必死で涙を止めるとミロはまた駆け出した。道なんてないけれど、兎に角自分が信じる方角へと必死で足を動かした。
息も上がり、足が痛くて歩くのがやっとになった頃、大きな泉へとたどり着いた。
食料は用意していても飲み物は用意していなかったミロは、犬のように泉に顔を付けると無我夢中で水を飲んだ。十分にのどを潤し、ほっと一息ついて辺りを見回すと木の影からこちらを見ている自分と同じくらいの子供と目が合った。
ありえない。
それが真っ先に頭に浮かんだ言葉だった。
この真冬に、薄手のシャツに半ズボン。まるっきり春の装いだ。辛うじて首に巻かれたマフラーが冬の名残りに見えた。
ミロは体を起こすと、一目散に子供に駆け寄った。
「きみ、どうしたの!そんなかっこじゃかぜをひくよ」
ミロは驚いて尋ねたが、目の前の子供は不思議そうに首を傾げるだけだ。言葉が通じないのか、それとも耳が聞こえないのか?
ミロはじれったくなって、着ていたコートを脱いで子供の肩にかけてやった。子供は吃驚してコートを脱ぐと、ミロに向かって何かを言っていたが、聞いたこともない言葉だった。どうやら、外国から来たらしい。
「いいから、きてて。すてごのおれでも、こんなかっこうでそとにだされたことないのに…。きみ、ひどいくらしをしてたんだね」
よく見るとこどものかおは青白く、手足も自分より細くて体つきもこじんまりしている。ミロはその子が不憫で堪らなくなって、コートのポケットに手をつっこむとパンを貴重な食料を渡した。それから無理やりもう一度コートを着させた。
子供はますます困った顔をしたが、今度は無理に返そうとはしなかった。だぼついたコートを羽織り、手にしたパンの匂いを嗅いだ。
『あの、ありがとう…。これ、たべられる、んだよね?』
孤児院育ちのミロは知らなかったが、子供の着ている服はフランスでは有名なブランド物だった。子供の髪から香る匂いは上質なシャンプーのものだし、顔色も青白く見える割に肌艶は良い。つまり、この子はミロのように貧しい孤児などではなく、良家の坊ちゃんだった。
ミロから押し付けられたパンを不審な目で見る子供。だが、ミロの目には子供がエサを前に飢えた仔犬のように映っていた。
「おなかいいぱいたべていいんだよ」
子供はミロとパンを交互に見ると、仕方なさそうにそれを一口齧って見せた。一日たって固くなったパンをもそもそと咀嚼し、ごくりと飲み込む。今まで食べた中で一番まずいパンだった。それなのに、ミロがあまりにキラキラした目で見つめてくるので、子供はどうしたらいいのか分からず、眉をハノ字にして首を傾げた。
その時だった。
『カミュ、こんなところにいたのかい?』
遠くの方から、耳慣れない言葉が聞こえた。その声は聞き覚えがある声だった。
ミロの野性的な勘が、”危険だ”と告げていた。ミロは慌ててくるりと踵を返すと、逃げ出そうと地面を蹴った…つもりだった。
『ところでミロ、どうして君がここにいるのかな?』
体が宙に浮く。ぎこちなく振り返ると、ニコニコと笑ってそこに立っていたのはアイオロス。ミロがこの聖域にやってきて初めて出会った”聖闘士”である。
こうしてミロの脱走騒動は幕を閉じた。聖域へと連れ戻されたミロはこってりと絞られ、大粒の涙を流して反省文を書かされた。
END
実はこの話、2月に書きはじめたんだけど長いこと放置で季節がずれちゃった(;^ω^)
ミロとカミュの出会い妄想。この二人の出会いは何通り妄想しても飽きないです。
孤児院から聖域と呼ばれる場所に引っ張ってこられて5日目。早くもミロは、この場所に嫌気がさして、脱走を試みた。
日の出よりも早く起きるのは、孤児院の生活で慣れている。部屋の中を漁り、下着を2枚と薄手のシャツ、その上にセーターを着こんでコートを羽織る。手袋とマフラーも忘れずに。逃亡生活に備えて昨日夕食の際に盗み出した三つのパンと一切れのハムをハンカチに包んでコートのポケットにしまった。
孤児院からミロが持ってきたのは、最低限の下着と毛玉だらけの着古したセーターだけだった。それだって優遇された方だ。孤児たちに自分の持ち物はなく、全てが院のものだから。だから孤児のミロに、必需品として衣服を、特に上質なコートを買い与えてくれた聖域の人々はきっと悪い人ではないのだろう。何が嫌だったのかと聞かれると、はっきりとはわからない。だた何かを決めつけられるような、大人たちの視線や気配に子供ながらも異様なものを感じ取ったのだ。
『ゴメンね』と呟き、ミロはそっと窓から外へと飛び出した。
窓の外には薄暗い森が広がっている。よく分からないけれど、ここを抜ければ街に出れる気がした。
夢中で走った。途中、何度も木の根っこにつまずいて転んだ。元々継だらけのズボンは簡単に破れて、膝に血が滲んだ。ミロの瞳に涙が浮かぶ。だが、ここから逃げるためには泣いている暇はない。泥だらけの手で、瞼を擦ると土のせいで余計に目が痛くなった。けれども必死で涙を止めるとミロはまた駆け出した。道なんてないけれど、兎に角自分が信じる方角へと必死で足を動かした。
息も上がり、足が痛くて歩くのがやっとになった頃、大きな泉へとたどり着いた。
食料は用意していても飲み物は用意していなかったミロは、犬のように泉に顔を付けると無我夢中で水を飲んだ。十分にのどを潤し、ほっと一息ついて辺りを見回すと木の影からこちらを見ている自分と同じくらいの子供と目が合った。
ありえない。
それが真っ先に頭に浮かんだ言葉だった。
この真冬に、薄手のシャツに半ズボン。まるっきり春の装いだ。辛うじて首に巻かれたマフラーが冬の名残りに見えた。
ミロは体を起こすと、一目散に子供に駆け寄った。
「きみ、どうしたの!そんなかっこじゃかぜをひくよ」
ミロは驚いて尋ねたが、目の前の子供は不思議そうに首を傾げるだけだ。言葉が通じないのか、それとも耳が聞こえないのか?
ミロはじれったくなって、着ていたコートを脱いで子供の肩にかけてやった。子供は吃驚してコートを脱ぐと、ミロに向かって何かを言っていたが、聞いたこともない言葉だった。どうやら、外国から来たらしい。
「いいから、きてて。すてごのおれでも、こんなかっこうでそとにだされたことないのに…。きみ、ひどいくらしをしてたんだね」
よく見るとこどものかおは青白く、手足も自分より細くて体つきもこじんまりしている。ミロはその子が不憫で堪らなくなって、コートのポケットに手をつっこむとパンを貴重な食料を渡した。それから無理やりもう一度コートを着させた。
子供はますます困った顔をしたが、今度は無理に返そうとはしなかった。だぼついたコートを羽織り、手にしたパンの匂いを嗅いだ。
『あの、ありがとう…。これ、たべられる、んだよね?』
孤児院育ちのミロは知らなかったが、子供の着ている服はフランスでは有名なブランド物だった。子供の髪から香る匂いは上質なシャンプーのものだし、顔色も青白く見える割に肌艶は良い。つまり、この子はミロのように貧しい孤児などではなく、良家の坊ちゃんだった。
ミロから押し付けられたパンを不審な目で見る子供。だが、ミロの目には子供がエサを前に飢えた仔犬のように映っていた。
「おなかいいぱいたべていいんだよ」
子供はミロとパンを交互に見ると、仕方なさそうにそれを一口齧って見せた。一日たって固くなったパンをもそもそと咀嚼し、ごくりと飲み込む。今まで食べた中で一番まずいパンだった。それなのに、ミロがあまりにキラキラした目で見つめてくるので、子供はどうしたらいいのか分からず、眉をハノ字にして首を傾げた。
その時だった。
『カミュ、こんなところにいたのかい?』
遠くの方から、耳慣れない言葉が聞こえた。その声は聞き覚えがある声だった。
ミロの野性的な勘が、”危険だ”と告げていた。ミロは慌ててくるりと踵を返すと、逃げ出そうと地面を蹴った…つもりだった。
『ところでミロ、どうして君がここにいるのかな?』
体が宙に浮く。ぎこちなく振り返ると、ニコニコと笑ってそこに立っていたのはアイオロス。ミロがこの聖域にやってきて初めて出会った”聖闘士”である。
こうしてミロの脱走騒動は幕を閉じた。聖域へと連れ戻されたミロはこってりと絞られ、大粒の涙を流して反省文を書かされた。
END
実はこの話、2月に書きはじめたんだけど長いこと放置で季節がずれちゃった(;^ω^)
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2016/02/08 (Mon)10:22
happyBIRTHDAYカミュ(≧▽≦)と言うことで、ブログでお世話になっている尾羽っSUN様からのリクエスト。”誕生日に無茶なお願いをミロにとりつけるカミュ”でした。無茶ってほどじゃないですけど。出来上がる前の二人です。カミュは自覚済み。ミロは、よく分かんないけど、カミュにされることなら何でも受け入れちゃう感じ。
二月のギリシャは冬真っただ中だ。だが、鍛錬に明け暮れる聖闘士たちに季節は関係ない。外で体を動かせば、冬でも汗をかくことは多々ある。
2月7日の夕方。俺は、下級兵士たちの訓練を終え友の待つ宮へと足を運んだ。本日、めでたく一つ年を重ねたカミュに「何か欲しい物はあるかと」訊ねたところ、不思議なリクエストがやってきた。
首を傾げつつ了承すると、ヤツはほんの少し唇の端を吊り上げて笑った。あまり表情が動くことのないカミュの、上機嫌な顔だ。
そんな顔をされてしまっては、叶えぬわけにはいかないではないか。
ということで、自宮に荷物を取りに戻るとその足で瓶宝宮を目指した。甘いものがあまり好きではないカミュの為に作ってもらった甘さ控えめのブランデーケーキととっておきのワインを片手に。
「遅かったな」
俺が宮のプライベートスペースへと足を踏み入れると、ソファーに座っていたカミュが声を掛けた。視線は手元の文庫本に向いたままだが、雰囲気から浮足立っているのが分かる。
「そうでもないだろう。定時で切り上げてきたんだ。遅く感じたならば、それはキミがそわそわしているからだ」
からかい交じりで指摘すると、カミュはばつが悪そうに眉根を寄せ小さく咳払いをした。
「happyBIRTHDAY、カミュ。今年も、元気なキミを見られてうれしいよ」
「私の誕生日を祝うつもりならば、そんな所に突っ立っていないで、こちらへ来い」
照れ隠しなのかいつもより不愛想なカミュが示したのは、彼の膝の上。当たり前のようにぽんぽんと膝を打ち、こちらをじっと見つめている。
「は?」
意味が分からない。カミュに欲しいものを聞いたときから頭の中は疑問符でいっぱいだが、今度のことで益々意味が分からなくなった。
「俺、訓練が終わってから風呂に入ってないから。汚いぞ」
カミュからの返事はなく、期待を含んだ瞳でこちらを見つめている。これでは、拒否するわけにはいかず。テーブルの上にケーキとワインを置く。恐る恐る、カミュの膝の上に腰かけた。
がっちりと、腰に回されるカミュの腕。背中にカミュのぐりぐりと額が押し付けられる。
「ちょ、カミュ。俺本当に汗臭いし、埃っぽ「いいから、黙れ」」
カミュの指先が汗ばんで重くなった髪に触れる。優しく梳くように撫でつけ、それからジットリとした地肌をマッサージするように髪を掻き上げたた。スーハ―と後ろでカミュが深呼吸する音が響く。
「汗臭い」
「だろうな。キミの望み通り今日は沢山汗をかいたからな」
カミュからのリクエストは『沢山汗をかいて、そのまま会いに来てほしい。夜は一緒に過ごしたい』だった。夜は一緒に過ごしたいはわかるとして、汗をかいてこいとは一体どういうことだ?カミュの膝の上に抱きかかえられている今でも、彼の意図がよく分からない。ぼんやりと考え事をしていると、項をぬるりとした感触が撫で上げた。ゾクリとしたものが背中を這い上がってくる。不意打ちに身をすくませると、背後でクツクツと喉を鳴らすような笑い声が聞こえた。
「な、何するんだ!」
「驚きすぎだぞ、ミロ。私はただ、お前の首筋を舐めただけだ。あまりにいい匂いがしたのでな」
「は?汗臭いと言ったのはどの口だ」
「この汗の匂いこそが極上なのだ。どんな香水でも、この香りにはかなわぬ」
蕩けるような甘ったるい声で、カミュが囁く。振り返ってみると、見たこともないほどうっとりとした顔で、俺の髪に口づけていた。
何がそんなにうれしいのやら?
頭のいいやつの考えることは分からんと、首を傾げる。少し居心地が悪い気がして、尻をもぞもぞと動かすと、ぴたりと密着している腰のあたりに、何か固い物が押しあたっている気がするのは…気のせいに違いない。
「カミュ。俺はそろそろ風呂に入りたいのだが。汗が張り付いて気持ち悪い」
「ん?そうだな。もう少しこの香りを堪能していたい気もするが…ミロは鍛錬で腹が空いているだろう。さっさと風呂に入って、夕飯にしよう。お前が風呂から出てくるころにはキッシュもちょうどよく焼きあがっているだろうから」
「ありがとう。カミュの誕生日なのに、メシの支度をさせてしまってなんだか悪いな」
「気にすることはない、私がしたくてすることだ。それでな、風呂に入ったらこれで体を隅々まで洗ってくれ」
「は、い?」
今一つ状況が呑み込めない俺に、カミュは淡いピンクのボトルを握らせた。
「ミロの体臭と混ざり合って、とてもよい香りになると思うのだ。もちろん、汗の匂いにはかなわぬがな」
滅多に見られない極上の微笑みで頼まれてしまっては、断る事なんてできない。俺はこくりと頷くと、ボトルを手に風呂へと向かった。
END
私にエロの文才があったならば、何ラウンドか終えた後のピロートークでミロの汗のにおいに興奮するカミュを書きたい。が、そんな技量はないので出来上がったのがこの話。
ご飯の後はミロを膝の上に抱えてスーハ―タイムして、もしかしたら美味しくいただいちゃうかもしれませんね。
二月のギリシャは冬真っただ中だ。だが、鍛錬に明け暮れる聖闘士たちに季節は関係ない。外で体を動かせば、冬でも汗をかくことは多々ある。
2月7日の夕方。俺は、下級兵士たちの訓練を終え友の待つ宮へと足を運んだ。本日、めでたく一つ年を重ねたカミュに「何か欲しい物はあるかと」訊ねたところ、不思議なリクエストがやってきた。
首を傾げつつ了承すると、ヤツはほんの少し唇の端を吊り上げて笑った。あまり表情が動くことのないカミュの、上機嫌な顔だ。
そんな顔をされてしまっては、叶えぬわけにはいかないではないか。
ということで、自宮に荷物を取りに戻るとその足で瓶宝宮を目指した。甘いものがあまり好きではないカミュの為に作ってもらった甘さ控えめのブランデーケーキととっておきのワインを片手に。
「遅かったな」
俺が宮のプライベートスペースへと足を踏み入れると、ソファーに座っていたカミュが声を掛けた。視線は手元の文庫本に向いたままだが、雰囲気から浮足立っているのが分かる。
「そうでもないだろう。定時で切り上げてきたんだ。遅く感じたならば、それはキミがそわそわしているからだ」
からかい交じりで指摘すると、カミュはばつが悪そうに眉根を寄せ小さく咳払いをした。
「happyBIRTHDAY、カミュ。今年も、元気なキミを見られてうれしいよ」
「私の誕生日を祝うつもりならば、そんな所に突っ立っていないで、こちらへ来い」
照れ隠しなのかいつもより不愛想なカミュが示したのは、彼の膝の上。当たり前のようにぽんぽんと膝を打ち、こちらをじっと見つめている。
「は?」
意味が分からない。カミュに欲しいものを聞いたときから頭の中は疑問符でいっぱいだが、今度のことで益々意味が分からなくなった。
「俺、訓練が終わってから風呂に入ってないから。汚いぞ」
カミュからの返事はなく、期待を含んだ瞳でこちらを見つめている。これでは、拒否するわけにはいかず。テーブルの上にケーキとワインを置く。恐る恐る、カミュの膝の上に腰かけた。
がっちりと、腰に回されるカミュの腕。背中にカミュのぐりぐりと額が押し付けられる。
「ちょ、カミュ。俺本当に汗臭いし、埃っぽ「いいから、黙れ」」
カミュの指先が汗ばんで重くなった髪に触れる。優しく梳くように撫でつけ、それからジットリとした地肌をマッサージするように髪を掻き上げたた。スーハ―と後ろでカミュが深呼吸する音が響く。
「汗臭い」
「だろうな。キミの望み通り今日は沢山汗をかいたからな」
カミュからのリクエストは『沢山汗をかいて、そのまま会いに来てほしい。夜は一緒に過ごしたい』だった。夜は一緒に過ごしたいはわかるとして、汗をかいてこいとは一体どういうことだ?カミュの膝の上に抱きかかえられている今でも、彼の意図がよく分からない。ぼんやりと考え事をしていると、項をぬるりとした感触が撫で上げた。ゾクリとしたものが背中を這い上がってくる。不意打ちに身をすくませると、背後でクツクツと喉を鳴らすような笑い声が聞こえた。
「な、何するんだ!」
「驚きすぎだぞ、ミロ。私はただ、お前の首筋を舐めただけだ。あまりにいい匂いがしたのでな」
「は?汗臭いと言ったのはどの口だ」
「この汗の匂いこそが極上なのだ。どんな香水でも、この香りにはかなわぬ」
蕩けるような甘ったるい声で、カミュが囁く。振り返ってみると、見たこともないほどうっとりとした顔で、俺の髪に口づけていた。
何がそんなにうれしいのやら?
頭のいいやつの考えることは分からんと、首を傾げる。少し居心地が悪い気がして、尻をもぞもぞと動かすと、ぴたりと密着している腰のあたりに、何か固い物が押しあたっている気がするのは…気のせいに違いない。
「カミュ。俺はそろそろ風呂に入りたいのだが。汗が張り付いて気持ち悪い」
「ん?そうだな。もう少しこの香りを堪能していたい気もするが…ミロは鍛錬で腹が空いているだろう。さっさと風呂に入って、夕飯にしよう。お前が風呂から出てくるころにはキッシュもちょうどよく焼きあがっているだろうから」
「ありがとう。カミュの誕生日なのに、メシの支度をさせてしまってなんだか悪いな」
「気にすることはない、私がしたくてすることだ。それでな、風呂に入ったらこれで体を隅々まで洗ってくれ」
「は、い?」
今一つ状況が呑み込めない俺に、カミュは淡いピンクのボトルを握らせた。
「ミロの体臭と混ざり合って、とてもよい香りになると思うのだ。もちろん、汗の匂いにはかなわぬがな」
滅多に見られない極上の微笑みで頼まれてしまっては、断る事なんてできない。俺はこくりと頷くと、ボトルを手に風呂へと向かった。
END
私にエロの文才があったならば、何ラウンドか終えた後のピロートークでミロの汗のにおいに興奮するカミュを書きたい。が、そんな技量はないので出来上がったのがこの話。
ご飯の後はミロを膝の上に抱えてスーハ―タイムして、もしかしたら美味しくいただいちゃうかもしれませんね。
2016/01/26 (Tue)10:33
バンプの「天体観測」が好きすぎて、どのジャンルでも一度はネタにしています。そういえばカミュミロではまだでした。ということで、仕事帰りに妄想。
午前一時五十七分。本来ならばとっくに眠っている時間。闘技場の裏手の森を迷うことなく突き進む。今宵は月もなく、僅かな星の光は木々に遮られているが、そんなことは問題ではない。日ごろからの訓練の賜物で、非常に夜目が利くのでぶつかるどころか、躓くことすらなく目的地まで真っ直ぐに走っていける。
森を抜けると、開けた丘に出る。おかの頂上まで一気に駆け上って辺りを見回し、ため息をついた。
「…遅刻か」
腕時計を確認すれば長針が十二にピタリと重なり、午前二時を回ったところだ。なのに、親友の姿はない。
だから一緒に行こうと言ったのに。
森の奥の丘は、この聖域で二番目に星が綺麗に見えるとっておきのスポットだ。けれどわざわざこんな所まで来なくても、聖域では星が綺麗に見える場所はいくらでもある。ここは二人だけの特等席なのだ。
いつもならば、どちらかの宮で待ち合わせをして一緒に出掛けるのに、今日に限って別がいいとミロが言いだした。理由を尋ねても『何となく』としか言わず、釈然としないまま了承したのだった。
「おーい、待たせたな!」
丘の裾野から、ミロが駆け上がってくる。いつもと同じ「なんだそれは」と言いたくなるほどの荷物を背負い込んで。
「遅刻だぞ、ミロ」
「もう、細かい男だなキミは。たった二分くらい大目に見ろよ」
少し頬を膨らませながら、ミロは鞄から毛布を取り出した。水筒と夜食と小さなラジオ。天体観測に来たというのに、望遠鏡も図鑑も星座早見版すら持っていないところが彼らしい。
「カミュ、寒い」
「相変わらずお前は軟弱だな」
「違う、カミュがおかしいんだ。あんな雪と氷しかない場所にずっといるから」
ぶつくさと文句を言うミロに、苦笑しながら一緒に毛布にくるまる。私よりもミロの方が体温が高いから、温かい思いをしているのは私の方だ。彼は、水筒から温かいココア(匂いで分かる)を一口飲むと、こちらに回してくれた。
「極大にはまだ時間があるが、今の時間帯でもそこそこの数が流れるだろう」
ミロが用意してくれたサンドイッチを齧りながら、空から振ってくる星の数を数えた。いつもは、寒くないようにぴったりとくっついているのに、今日のミロは落ち着きがない。離れたかと思うと小指の先ほどの隙間を作る。けれどすぐに引っ付いてくる。その繰り返しだ。どうしたと口を開きかけて、遮られた。ミロが天に輝く星の一つを指さして聞いた。
「なぁ、カミュ。あの星は何?」
「あれは双子座の一等星カストルだな」
私は図鑑を開いて、ミロに見せた。それから双子座を構成している星の説明、神話を簡単に語った。ミロは星と図鑑とを見比べながら、興味深そうに耳を傾けていた。
「サガはさ、片割れを探しに行ったのかな?」
「ん?」
「双子座の聖闘士なら、もしかしたら双子だったかもしれないだろ。サガが聖域からいなくなったのは、生き別れた兄弟を探しに行ったのかもしれない。死んだ兄を思って死の国に行こうとしたポルクスみたいに」
「…サガは責任感の強い男だ。例え肉親を捜しに行くのだとしても、黙っていなくなるようなまねはしない」
「でも、何か理由があったのかもしれん。誰にも言えないような!」
必死で捲し立てるミロに驚いて目を丸くする。ミロは、ハッと我に返ると力なく視線を地面へと落とした。
「すまん、変なことを言った。忘れてくれ」
「どうした?今日のミロはおかしいぞ」
私よりも一回り小さな体が小刻みに震えている。問い詰めようにも、ミロは頑なに口を閉ざしたままだ。仕方なく私も追及は諦め、星空へと視線を戻した。ラジオからは場違いなほど明るい音楽が流れ、対照的に空からは厳かな星の涙が流れていた。
この時の私は知らなかった。
すぐそばの未来も、ミロの行動の理由も、それから自分の気持ちさえも。
次の日、私は教皇から勅命を受けた。
シベリアの永久凍土の中から発見された白鳥座の聖闘士を育てるようにと。
続く
別にこの話、サガは関係ないです。
時期的に冬の話にしたくて、ちょうど双子座流星群が12月だったので使っただけなので(;^ω^)
さて、次はミロ編書くぞ!
午前一時五十七分。本来ならばとっくに眠っている時間。闘技場の裏手の森を迷うことなく突き進む。今宵は月もなく、僅かな星の光は木々に遮られているが、そんなことは問題ではない。日ごろからの訓練の賜物で、非常に夜目が利くのでぶつかるどころか、躓くことすらなく目的地まで真っ直ぐに走っていける。
森を抜けると、開けた丘に出る。おかの頂上まで一気に駆け上って辺りを見回し、ため息をついた。
「…遅刻か」
腕時計を確認すれば長針が十二にピタリと重なり、午前二時を回ったところだ。なのに、親友の姿はない。
だから一緒に行こうと言ったのに。
森の奥の丘は、この聖域で二番目に星が綺麗に見えるとっておきのスポットだ。けれどわざわざこんな所まで来なくても、聖域では星が綺麗に見える場所はいくらでもある。ここは二人だけの特等席なのだ。
いつもならば、どちらかの宮で待ち合わせをして一緒に出掛けるのに、今日に限って別がいいとミロが言いだした。理由を尋ねても『何となく』としか言わず、釈然としないまま了承したのだった。
「おーい、待たせたな!」
丘の裾野から、ミロが駆け上がってくる。いつもと同じ「なんだそれは」と言いたくなるほどの荷物を背負い込んで。
「遅刻だぞ、ミロ」
「もう、細かい男だなキミは。たった二分くらい大目に見ろよ」
少し頬を膨らませながら、ミロは鞄から毛布を取り出した。水筒と夜食と小さなラジオ。天体観測に来たというのに、望遠鏡も図鑑も星座早見版すら持っていないところが彼らしい。
「カミュ、寒い」
「相変わらずお前は軟弱だな」
「違う、カミュがおかしいんだ。あんな雪と氷しかない場所にずっといるから」
ぶつくさと文句を言うミロに、苦笑しながら一緒に毛布にくるまる。私よりもミロの方が体温が高いから、温かい思いをしているのは私の方だ。彼は、水筒から温かいココア(匂いで分かる)を一口飲むと、こちらに回してくれた。
「極大にはまだ時間があるが、今の時間帯でもそこそこの数が流れるだろう」
ミロが用意してくれたサンドイッチを齧りながら、空から振ってくる星の数を数えた。いつもは、寒くないようにぴったりとくっついているのに、今日のミロは落ち着きがない。離れたかと思うと小指の先ほどの隙間を作る。けれどすぐに引っ付いてくる。その繰り返しだ。どうしたと口を開きかけて、遮られた。ミロが天に輝く星の一つを指さして聞いた。
「なぁ、カミュ。あの星は何?」
「あれは双子座の一等星カストルだな」
私は図鑑を開いて、ミロに見せた。それから双子座を構成している星の説明、神話を簡単に語った。ミロは星と図鑑とを見比べながら、興味深そうに耳を傾けていた。
「サガはさ、片割れを探しに行ったのかな?」
「ん?」
「双子座の聖闘士なら、もしかしたら双子だったかもしれないだろ。サガが聖域からいなくなったのは、生き別れた兄弟を探しに行ったのかもしれない。死んだ兄を思って死の国に行こうとしたポルクスみたいに」
「…サガは責任感の強い男だ。例え肉親を捜しに行くのだとしても、黙っていなくなるようなまねはしない」
「でも、何か理由があったのかもしれん。誰にも言えないような!」
必死で捲し立てるミロに驚いて目を丸くする。ミロは、ハッと我に返ると力なく視線を地面へと落とした。
「すまん、変なことを言った。忘れてくれ」
「どうした?今日のミロはおかしいぞ」
私よりも一回り小さな体が小刻みに震えている。問い詰めようにも、ミロは頑なに口を閉ざしたままだ。仕方なく私も追及は諦め、星空へと視線を戻した。ラジオからは場違いなほど明るい音楽が流れ、対照的に空からは厳かな星の涙が流れていた。
この時の私は知らなかった。
すぐそばの未来も、ミロの行動の理由も、それから自分の気持ちさえも。
次の日、私は教皇から勅命を受けた。
シベリアの永久凍土の中から発見された白鳥座の聖闘士を育てるようにと。
続く
別にこの話、サガは関係ないです。
時期的に冬の話にしたくて、ちょうど双子座流星群が12月だったので使っただけなので(;^ω^)
さて、次はミロ編書くぞ!
2015/12/28 (Mon)23:50
十歳くらいイメージでお願いします。まだギリギリ親友。恋愛感情無しで。甘え下手で弱ってるカミュと能天気で無意識お母さんなミロ。
リハビリで書いたSSですので、いつも以上に拙いのはご容赦ください。
ベッドの上で、枕をクッション代わりにベッドサイドにもたれ掛かった親友がシャツの裾を捲り上げて手招きをする。
「ほら、早く来いよ」
「いや、べつに私は…」
ミロは困惑し尻ごみをする私の腕をじれったそうに引っ張ると、有無を言わさず膝の上に座らせた。
全く、なぜこうなった!?
数時間前の自分の発言に後悔しつつ、大げさにため息をついた。
麗かな昼下がりの公園。何の面白味もない女性がベンチに座っている。首にケープを巻き胸から下は隠されているが、何かを抱えているのはその服の膨らみで分かる。傍らには真新しいベビーカー。だが、中に赤ん坊はいない。そう、赤ん坊は今食事の真っ最中。母親の腕に抱かれ、一心不乱に乳を吸っているのだろう。残念ながら、その顔を見ることは出来ないが、きっと安心しきっているにちがいない。母親は、愛情が満ち溢れた顔で、ケープ越しに我が子を見つめている。
まさに「平和」の一言に尽きる、ごくありふれた情景だ。それなのに、さきほどから重い鉛のようなものが、胸の内に沈んでいる。
今さら、なんだというのだ。私は黄金聖闘士。くだらない感傷に惑わされるな。
そう自分を叱責してみても、一向に胸の内は晴れない。
「なぁ、カミュ。何を真剣に見つめているんだ?」
ミロの問いかけに、随分と長いことそれを見つめていたことを思い知らされた。反射的に「なんでもない」と答えたが、動物的な勘が鋭い親友はそれで納得はしてくれなかった。ただ無理やり聞き出すようなまねはせず、大きな瞳でじっとこちらを見つめている。
昔から、ミロのこの顔が苦手だ。こんなふうに見つめられると、胸の内を覗かれている気持になる。流しきれずに、隠しておきたい重くドロドロした部分を話す羽目になるのだ。
私は観念して口を開いた。
「昔、少し話したと思うが。私の両親は、私をずっと疎んじていた。私の故郷では、紅い瞳は悪魔の印。二人とも私のことを恐怖と嫌悪が入り混じった目で見ていた。だがな、時々思うのだ。例え悪魔の子供だとしても、生まれたばかりの赤子は乳を飲まねば死んでしまう。私の母親は、私に乳を与え、生かしてくれた。それは、親としての責任の為か、それとも一欠けらの愛情があったのだろうか。そんなつまらないことを考えていたのだ」
こんなみっともない感傷に浸っているのは、きっとこの前初めて人を殺めたからだ。粛清任務もこなせるようになって一人前。分かってはいるが、相手を屠ったその瞬間体の震えが止まらなかった。私の紅い瞳や髪を気味悪がり、「お前は悪魔付だ。今に人を傷つけて喜ぶ子になるにちがいない」と呪いのように言っていた両親の顔が浮かんだ。
両親の予言通り人を傷つける私は、誰からも愛されることのない存在なのではないか。そんな考えが頭をよぎる。何とも馬鹿げた妄想だ。だがそれは、なかなか私の頭の中から消えてくれない。流石にここまでネガティブな思考は、親友にも打ち明けられない。
私の告白に、ミロは大きな瞳を瞬かせた。それから難しい顔をいて黙り込んでしまった。
やはり、あんな話はするべきではなかった。
感受性の強い親友は、私の話を聞いて自分のことのように胸を痛めているのだろう。ミロの手を乱暴に引っ張ると歩き出した。
「随分と道草を食ってしまったな。さて、急いで買い物を済ませて帰ろう。夕飯は、いつものパンでいいか?」
ミロは頷き、ポトフが食べたいと言った。だからこの話はもうここで終わりだと思っていた。
ミロの左手が、優しく頭を撫でる。右手はとんとんとあやすように腰のあたりを軽く叩く。
「ミロ、いったい何がしたいんだ?」
「ん?いや、乳を飲む子供を見ていると、自分が一時でも両親に愛されていたのか、考えてしまうとさっき言っていただろう。だったら、再現してみればいい。もしかしたら、赤ん坊の頃の記憶が蘇ってくるかもしれんぞ」
なんと馬鹿げた提案だろう!!子供じみた思い付きに絶句する。 それなのに、さも名案だとでも言いたげにミロは頷く。
こうなったら仕方がない。ちょっと付き合ってやれば気が済むのだ。
突拍子もない親友の行動に呆れつつも、覚悟を決めた。
男の、それも子供の乳首は小さい。とても口に含めるものではないが、取りあえず薄い胸に唇を寄せ目を閉じる。
「カ、カミュ…くすぐったい!鼻息が胸にかかる…」
クツクツと笑いながら、ミロが身をよじる。
「コラ、乳を吸われてくすぐったいという母親がどこにいる」
全く、誰のせいでこんな恥ずかしいことをしていると思っているんだ!自分の発言が発端であることは棚にあげて、ミロを睨むと漸く「ゴメン、ゴメン」と静かになった。
全く馬鹿馬鹿しい。すぐ終わりにしてやる。
気を取り直して、もう一度小さな乳首を唇で挟んで目を閉じる。
唇を通して伝わる体温。脈打つ心臓。体つきは私の方が大きいというのに、ミロにすっぽりと包まれている感覚。先ほどまでの馬鹿にした気持ちは、すぐに消えていった。
手を繋ぐのとも、ハグとも違う絶対的な安心感。ずっとこのままで居たいとさえ、思えるような。
あぁ、そうか。
過去の記憶とか、そんなものどうでもいい。両親に疎まれていても、この手が血に染まっていても。
この温もりがあれば生きていける。私の居場所はここにある。私の親友。
「カミュ。どう?思い出せそう?」
聞きなれたミロの声でさえ甘く感じる。
恥ずかしい。これでは本当に赤ん坊になったようだ。
照れた顔を見られたくなくて、わざとミロの髪をぐちゃぐちゃにかき回した。ミロから上がる苦情の声は聞こえないふりをした。
END
リハビリで書いたSSですので、いつも以上に拙いのはご容赦ください。
ベッドの上で、枕をクッション代わりにベッドサイドにもたれ掛かった親友がシャツの裾を捲り上げて手招きをする。
「ほら、早く来いよ」
「いや、べつに私は…」
ミロは困惑し尻ごみをする私の腕をじれったそうに引っ張ると、有無を言わさず膝の上に座らせた。
全く、なぜこうなった!?
数時間前の自分の発言に後悔しつつ、大げさにため息をついた。
麗かな昼下がりの公園。何の面白味もない女性がベンチに座っている。首にケープを巻き胸から下は隠されているが、何かを抱えているのはその服の膨らみで分かる。傍らには真新しいベビーカー。だが、中に赤ん坊はいない。そう、赤ん坊は今食事の真っ最中。母親の腕に抱かれ、一心不乱に乳を吸っているのだろう。残念ながら、その顔を見ることは出来ないが、きっと安心しきっているにちがいない。母親は、愛情が満ち溢れた顔で、ケープ越しに我が子を見つめている。
まさに「平和」の一言に尽きる、ごくありふれた情景だ。それなのに、さきほどから重い鉛のようなものが、胸の内に沈んでいる。
今さら、なんだというのだ。私は黄金聖闘士。くだらない感傷に惑わされるな。
そう自分を叱責してみても、一向に胸の内は晴れない。
「なぁ、カミュ。何を真剣に見つめているんだ?」
ミロの問いかけに、随分と長いことそれを見つめていたことを思い知らされた。反射的に「なんでもない」と答えたが、動物的な勘が鋭い親友はそれで納得はしてくれなかった。ただ無理やり聞き出すようなまねはせず、大きな瞳でじっとこちらを見つめている。
昔から、ミロのこの顔が苦手だ。こんなふうに見つめられると、胸の内を覗かれている気持になる。流しきれずに、隠しておきたい重くドロドロした部分を話す羽目になるのだ。
私は観念して口を開いた。
「昔、少し話したと思うが。私の両親は、私をずっと疎んじていた。私の故郷では、紅い瞳は悪魔の印。二人とも私のことを恐怖と嫌悪が入り混じった目で見ていた。だがな、時々思うのだ。例え悪魔の子供だとしても、生まれたばかりの赤子は乳を飲まねば死んでしまう。私の母親は、私に乳を与え、生かしてくれた。それは、親としての責任の為か、それとも一欠けらの愛情があったのだろうか。そんなつまらないことを考えていたのだ」
こんなみっともない感傷に浸っているのは、きっとこの前初めて人を殺めたからだ。粛清任務もこなせるようになって一人前。分かってはいるが、相手を屠ったその瞬間体の震えが止まらなかった。私の紅い瞳や髪を気味悪がり、「お前は悪魔付だ。今に人を傷つけて喜ぶ子になるにちがいない」と呪いのように言っていた両親の顔が浮かんだ。
両親の予言通り人を傷つける私は、誰からも愛されることのない存在なのではないか。そんな考えが頭をよぎる。何とも馬鹿げた妄想だ。だがそれは、なかなか私の頭の中から消えてくれない。流石にここまでネガティブな思考は、親友にも打ち明けられない。
私の告白に、ミロは大きな瞳を瞬かせた。それから難しい顔をいて黙り込んでしまった。
やはり、あんな話はするべきではなかった。
感受性の強い親友は、私の話を聞いて自分のことのように胸を痛めているのだろう。ミロの手を乱暴に引っ張ると歩き出した。
「随分と道草を食ってしまったな。さて、急いで買い物を済ませて帰ろう。夕飯は、いつものパンでいいか?」
ミロは頷き、ポトフが食べたいと言った。だからこの話はもうここで終わりだと思っていた。
ミロの左手が、優しく頭を撫でる。右手はとんとんとあやすように腰のあたりを軽く叩く。
「ミロ、いったい何がしたいんだ?」
「ん?いや、乳を飲む子供を見ていると、自分が一時でも両親に愛されていたのか、考えてしまうとさっき言っていただろう。だったら、再現してみればいい。もしかしたら、赤ん坊の頃の記憶が蘇ってくるかもしれんぞ」
なんと馬鹿げた提案だろう!!子供じみた思い付きに絶句する。 それなのに、さも名案だとでも言いたげにミロは頷く。
こうなったら仕方がない。ちょっと付き合ってやれば気が済むのだ。
突拍子もない親友の行動に呆れつつも、覚悟を決めた。
男の、それも子供の乳首は小さい。とても口に含めるものではないが、取りあえず薄い胸に唇を寄せ目を閉じる。
「カ、カミュ…くすぐったい!鼻息が胸にかかる…」
クツクツと笑いながら、ミロが身をよじる。
「コラ、乳を吸われてくすぐったいという母親がどこにいる」
全く、誰のせいでこんな恥ずかしいことをしていると思っているんだ!自分の発言が発端であることは棚にあげて、ミロを睨むと漸く「ゴメン、ゴメン」と静かになった。
全く馬鹿馬鹿しい。すぐ終わりにしてやる。
気を取り直して、もう一度小さな乳首を唇で挟んで目を閉じる。
唇を通して伝わる体温。脈打つ心臓。体つきは私の方が大きいというのに、ミロにすっぽりと包まれている感覚。先ほどまでの馬鹿にした気持ちは、すぐに消えていった。
手を繋ぐのとも、ハグとも違う絶対的な安心感。ずっとこのままで居たいとさえ、思えるような。
あぁ、そうか。
過去の記憶とか、そんなものどうでもいい。両親に疎まれていても、この手が血に染まっていても。
この温もりがあれば生きていける。私の居場所はここにある。私の親友。
「カミュ。どう?思い出せそう?」
聞きなれたミロの声でさえ甘く感じる。
恥ずかしい。これでは本当に赤ん坊になったようだ。
照れた顔を見られたくなくて、わざとミロの髪をぐちゃぐちゃにかき回した。ミロから上がる苦情の声は聞こえないふりをした。
END
2015/11/28 (Sat)07:25
シベリアで弟子をとるようになってから早4年。定期報告の為に半年ぶりに聖域に戻った私は、天蠍宮の前で顔を顰めた。
宮の入口で、雑兵が倒れている。背中には矢座のトレミーの矢が幾本も刺さり、おびただしい血が石段を汚している…ようにみえるが。
「ミロ、血のりに砂糖を加えるのは口に含むときだけでよいのだ。背中に使用する分まで砂糖を入れたせいで、蟻がたかっているぞ」
その言葉に、ミロは慌てて体を起こすとシャツを脱ぎ捨てた。カタンと音を立てて背中の矢が石畳の上に落ちる。一本拾い上げてみれば、それは紛れもなくトレミーの矢だった。先は潰してあるが。
「どうりで体がもぞもぞすると思ったら…。せっかくの苦労が水の泡だ。こんなことなら、いつも通り室内でやればよかった!」
バタバタとシャツを振って蟻を落とす。髪にもついているので、手で払ってやった。
全く、昔から後先考えぬ男だ。時々、自分の弟子の方が知能指数が高いのではないかと心配になる。
「…どれくらい死体を演じてたんだ?」
ミロは口をへの字に結んだまま、首を傾げると「一時間くらいか」と答えた。
一時間…。つまらない悪戯の為に随分と無駄な時間と労力をつぎ込んだものだ。その間、ここを通った者のことを思うと、あきれ果て「掃除が大変だな」と呟くのがやっとだった。
「せめて君が驚いてくれたら、よかったんだがな。さて、これから報告だろう、行ってくるといい。夕飯くらいは付き合ってくれるんだろう?」
「すまんが、今日は無理だ。修行に必要な資料をまとめなければならないのでな」
「フラれてしまったか。あまり根詰めるなよ。君が体を壊したら可愛い弟子が泣くぞ」
「心得ているさ」
軽いハグを交わし、ミロと別れる。彼はこれから、一人であの後始末をするのだろう。全くご苦労なことだ。
石段を登り、教皇宮までたどり着くと法衣姿のアフロディーテと出会った。
「今回は何だった?」
「矢が刺さった雑兵だった」
「ほう。雑兵か。いろいろ考えるものだね。確かこれで4作目だろ?」
「…5作目だ」
一作目は、聖衣を纏って胸にブラッディ―ローズが突き刺さっていた。一瞬驚いたが、白バラを染めているのが絵具だとすぐにわかってミロを嗜めた。
二作目は私服でロープが首に巻き付いていた。「黄金聖闘士を絞殺できる者がそうそういるはずなかろう」と言うと、ミロは満足そうにくくくと笑った。
三作目は練習着で倒れていて、背中には派手な刀傷がついていた。本人曰く、「シュラのエクスカリバーをイメージしたんだ」とあっけらかんと言っていた。
四作目は練習着で頭に斧が刺さっていた。あの、斧が刺さったまま茶を出された時はかなりシュールだった。血のりの色とハーブティーの色がそっくりで、飲む気が失せた。ミロなりのブラックジョークだったのだろか?いや、あいつにそこまでの思考はないと思いたい。
変な思い出に意識を飛ばしていると、「ところで」とアフロディーテの声が耳に届いた。
「どうしてミロはそんな悪戯をするんだろうね?」
「さぁな。こればっかりは私にも分からん」
アフロディーテは意味ありげに笑うと、仕事に戻っていった。私も自分の用事を済ませるために先を急いだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
調べものがひと段落したのは、深夜の時間帯に差し掛かってからだった。これから集めたデータをもとに訓練の内容を検討し直さなければならない。成長期にあわせて食事内容も見直さなければ…。
どっと疲れが出てきて、眉間を揉んだ。お茶でも飲んで一息入れることにしよう。重い腰を上げると、キッチンへと向かった。
湯を沸かしている間に、道具を用意する。主が留守にしていても、女官たちが定期的に手入れをしてくれているので、宮の中はいつでも清潔だ。
茶葉を出そうと戸棚を開けて、そこに見慣れない缶を見つけた。
はて?これは何だ?
怪訝に思いながら缶を手に取り開けてみる。キッチンに漂う強めの香りは、どこかで嗅いだ覚えがあった。だが、なかなか記憶と嗅覚が結びつかずに首をひねっていると、蓋の裏に小さな紙切れが貼り付けてあるのに気が付いた。
『お疲れさま。このハーブティー、血行を良くしたり、消化を助けたり、兎に角体にいいらしいぞ。弟子の育成で大変だろうが、自分の体も大切にな』
名前なんて書いてなくても分かる。右上がりの癖のあるこの文字は、間違いなくミロの字だ。
「そうだ、この茶は!」
頭に斧が刺さったミロが淹れてくれた茶だ。あの日、ミロはあのハーブティーを土産にとくれたのだ。だが、シベリアに帰還するために荷造りをしている最中に氷河が熱を出したと連絡が入って、焦って荷物にいれそびれた。たぶん、ベッドの脇にでも落ちていたものを掃除にきた女官か誰かがこの棚に置いておいてくれたのだろう。
『どうしてミロはそんな悪戯をするんだろうね?』
不意に、アフロディーテの問いかけが蘇る。
親友が奇行に走る理由、それは。
「寂しかった、のか」
昔は、一晩中星を見ながら語り合ったり、森の奥で秘密の鍛錬をしたり、いつだって私たちは一緒だった。
それなのにシベリアに渡ってからは、なれない弟子の育成に忙しくて、出す手紙と言えば帰還の知らせだけ。たまの語らいも私の口から出る殆どの話題は弟子の成長のことばかり。『離れていても心は繋がっている』そんな都合のいい言葉で、自分の怠慢を誤魔化していた。聖域で私の帰りを待つミロの気持ちを考えていなかった。ミロはこんなにも私を気にかけていてくれたのに…。
沸かしたての湯でハーブティーを淹れると、急いで自室に戻った。夜が開けるまでになんとしてでも切りの良い所まで仕上げねば。そして、朝食をミロと一緒に食べるのだ!
※※※※※※※※※
「すまんな、バタバタしてしまって」
「気にするな。お互い様だ」
結局、二人でゆっくりできたのはあの朝食の時だけだった。後はお互いに職務で忙しくて、碌に話せぬまま出立の日を迎えた。
「ミロ、お前が死んだ振りをしていいるのは…」
「ん?」
「いや、見慣れると面白いな」
「そう言われると、気合が入る」
昔と変わらない、悪戯小僧の顔でミロが笑う。だから私も顰め面で「調子に乗るなよ」と釘を刺す。昔と同じように。
聖域に帰ると友が必ず死んだ振りをしている。
ちょっと褒めると調子に乗るから、対応はできるだけクールに。
おまけ
「…今回は随分と頑張ったな…」
天蠍宮のプライベートスペースへと繋がるドアを開けると、そこには四肢を飛散させた巨大蠍の着ぐるみがあった。
まさかとは思うが、これをミロが縫ったのだろうか
巨大蠍は、完全に息の根が止まっていないようでカタカタと痙攣している。そしてその鋏の先には何か文字が書いてあった。
『おかえり』
血のりで書かれた文字を見て、返事の代わりに愛しい親友をグロテスクな着ぐるみごと抱きしめた。
宮の入口で、雑兵が倒れている。背中には矢座のトレミーの矢が幾本も刺さり、おびただしい血が石段を汚している…ようにみえるが。
「ミロ、血のりに砂糖を加えるのは口に含むときだけでよいのだ。背中に使用する分まで砂糖を入れたせいで、蟻がたかっているぞ」
その言葉に、ミロは慌てて体を起こすとシャツを脱ぎ捨てた。カタンと音を立てて背中の矢が石畳の上に落ちる。一本拾い上げてみれば、それは紛れもなくトレミーの矢だった。先は潰してあるが。
「どうりで体がもぞもぞすると思ったら…。せっかくの苦労が水の泡だ。こんなことなら、いつも通り室内でやればよかった!」
バタバタとシャツを振って蟻を落とす。髪にもついているので、手で払ってやった。
全く、昔から後先考えぬ男だ。時々、自分の弟子の方が知能指数が高いのではないかと心配になる。
「…どれくらい死体を演じてたんだ?」
ミロは口をへの字に結んだまま、首を傾げると「一時間くらいか」と答えた。
一時間…。つまらない悪戯の為に随分と無駄な時間と労力をつぎ込んだものだ。その間、ここを通った者のことを思うと、あきれ果て「掃除が大変だな」と呟くのがやっとだった。
「せめて君が驚いてくれたら、よかったんだがな。さて、これから報告だろう、行ってくるといい。夕飯くらいは付き合ってくれるんだろう?」
「すまんが、今日は無理だ。修行に必要な資料をまとめなければならないのでな」
「フラれてしまったか。あまり根詰めるなよ。君が体を壊したら可愛い弟子が泣くぞ」
「心得ているさ」
軽いハグを交わし、ミロと別れる。彼はこれから、一人であの後始末をするのだろう。全くご苦労なことだ。
石段を登り、教皇宮までたどり着くと法衣姿のアフロディーテと出会った。
「今回は何だった?」
「矢が刺さった雑兵だった」
「ほう。雑兵か。いろいろ考えるものだね。確かこれで4作目だろ?」
「…5作目だ」
一作目は、聖衣を纏って胸にブラッディ―ローズが突き刺さっていた。一瞬驚いたが、白バラを染めているのが絵具だとすぐにわかってミロを嗜めた。
二作目は私服でロープが首に巻き付いていた。「黄金聖闘士を絞殺できる者がそうそういるはずなかろう」と言うと、ミロは満足そうにくくくと笑った。
三作目は練習着で倒れていて、背中には派手な刀傷がついていた。本人曰く、「シュラのエクスカリバーをイメージしたんだ」とあっけらかんと言っていた。
四作目は練習着で頭に斧が刺さっていた。あの、斧が刺さったまま茶を出された時はかなりシュールだった。血のりの色とハーブティーの色がそっくりで、飲む気が失せた。ミロなりのブラックジョークだったのだろか?いや、あいつにそこまでの思考はないと思いたい。
変な思い出に意識を飛ばしていると、「ところで」とアフロディーテの声が耳に届いた。
「どうしてミロはそんな悪戯をするんだろうね?」
「さぁな。こればっかりは私にも分からん」
アフロディーテは意味ありげに笑うと、仕事に戻っていった。私も自分の用事を済ませるために先を急いだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
調べものがひと段落したのは、深夜の時間帯に差し掛かってからだった。これから集めたデータをもとに訓練の内容を検討し直さなければならない。成長期にあわせて食事内容も見直さなければ…。
どっと疲れが出てきて、眉間を揉んだ。お茶でも飲んで一息入れることにしよう。重い腰を上げると、キッチンへと向かった。
湯を沸かしている間に、道具を用意する。主が留守にしていても、女官たちが定期的に手入れをしてくれているので、宮の中はいつでも清潔だ。
茶葉を出そうと戸棚を開けて、そこに見慣れない缶を見つけた。
はて?これは何だ?
怪訝に思いながら缶を手に取り開けてみる。キッチンに漂う強めの香りは、どこかで嗅いだ覚えがあった。だが、なかなか記憶と嗅覚が結びつかずに首をひねっていると、蓋の裏に小さな紙切れが貼り付けてあるのに気が付いた。
『お疲れさま。このハーブティー、血行を良くしたり、消化を助けたり、兎に角体にいいらしいぞ。弟子の育成で大変だろうが、自分の体も大切にな』
名前なんて書いてなくても分かる。右上がりの癖のあるこの文字は、間違いなくミロの字だ。
「そうだ、この茶は!」
頭に斧が刺さったミロが淹れてくれた茶だ。あの日、ミロはあのハーブティーを土産にとくれたのだ。だが、シベリアに帰還するために荷造りをしている最中に氷河が熱を出したと連絡が入って、焦って荷物にいれそびれた。たぶん、ベッドの脇にでも落ちていたものを掃除にきた女官か誰かがこの棚に置いておいてくれたのだろう。
『どうしてミロはそんな悪戯をするんだろうね?』
不意に、アフロディーテの問いかけが蘇る。
親友が奇行に走る理由、それは。
「寂しかった、のか」
昔は、一晩中星を見ながら語り合ったり、森の奥で秘密の鍛錬をしたり、いつだって私たちは一緒だった。
それなのにシベリアに渡ってからは、なれない弟子の育成に忙しくて、出す手紙と言えば帰還の知らせだけ。たまの語らいも私の口から出る殆どの話題は弟子の成長のことばかり。『離れていても心は繋がっている』そんな都合のいい言葉で、自分の怠慢を誤魔化していた。聖域で私の帰りを待つミロの気持ちを考えていなかった。ミロはこんなにも私を気にかけていてくれたのに…。
沸かしたての湯でハーブティーを淹れると、急いで自室に戻った。夜が開けるまでになんとしてでも切りの良い所まで仕上げねば。そして、朝食をミロと一緒に食べるのだ!
※※※※※※※※※
「すまんな、バタバタしてしまって」
「気にするな。お互い様だ」
結局、二人でゆっくりできたのはあの朝食の時だけだった。後はお互いに職務で忙しくて、碌に話せぬまま出立の日を迎えた。
「ミロ、お前が死んだ振りをしていいるのは…」
「ん?」
「いや、見慣れると面白いな」
「そう言われると、気合が入る」
昔と変わらない、悪戯小僧の顔でミロが笑う。だから私も顰め面で「調子に乗るなよ」と釘を刺す。昔と同じように。
聖域に帰ると友が必ず死んだ振りをしている。
ちょっと褒めると調子に乗るから、対応はできるだけクールに。
おまけ
「…今回は随分と頑張ったな…」
天蠍宮のプライベートスペースへと繋がるドアを開けると、そこには四肢を飛散させた巨大蠍の着ぐるみがあった。
まさかとは思うが、これをミロが縫ったのだろうか
巨大蠍は、完全に息の根が止まっていないようでカタカタと痙攣している。そしてその鋏の先には何か文字が書いてあった。
『おかえり』
血のりで書かれた文字を見て、返事の代わりに愛しい親友をグロテスクな着ぐるみごと抱きしめた。