腐った妄想の吐きだし口。
現在は聖闘士星矢の蠍座のミロのハマっております。
2015/06/20 (Sat)01:30
”ただいま無事に産まれました。ミロも息子も元気です”
小宇宙を通じてカミュからの知らせに、あるものは感嘆の声をあげ、あるものは酒をあおり、あるものは首を傾げた。
時同じくして、五老峰で滝の前に座す老師は、青い空に向けて「新たに芽吹いた命、大切に育てるのだぞ」と祝いの言葉を述べた。
そんな中、教皇補佐として執務室に詰めていたサガは、ペンを置くと小宇宙を高め、静かに呟いた。
「アナザーディメ「この愚兄!!」」
サガがアナザーディメンションでこの場を去るよりも一瞬早く、カノンの邪魔が入り彼の目論見は失敗した。
「何をする愚弟めが!!ミロが一仕事終えたのだぞ。取り急ぎ駆けつけ、ねぎらいの言葉をかけてやるのが親という者だろう」
「バカか!今行ったところで迷惑にしかならんわ!!ミロの傍にはカミュが詰めているんだ、問題ないだろ」
「ぐぬぬぅぅ!それが気に入らんのだ!私のミロに手を出しおって!その上ヤリ逃げなど許せん。やはりここは、私が駆けつけねば」
「邪魔になるだけだと言っているだろうが!このわからず屋め!!」
「「消えろ愚弟・愚兄」」
完璧に千日戦争へと突入した双子は、互いの手を握り合い顔を突き合わせたまま小宇宙を最大限に高めはじめた。石柱にミシミシとひびが入り、天井からパラパラと破片が落ちる。
黄金聖闘士の中でもトップクラスの実力を持つ双子同士の喧嘩だ。同じ部屋で仕事をしてた神官たちは、こりゃたまらんと2人がつかみ合った時点で避難することに決め、早々に逃げ出していた。
部屋の中を緊張と静寂が満たす。
そんな中、部屋の入り口が静かに開いた。と、同時に閃光の一撃が2人の頭を撃ち抜いた。
「貴様ら、何している!!」
「「!!」」
200歳を超えているとは思えないほどの軽やかな動きでシオンは、双子に拳骨を喰らわせると部屋に轟く怒号をあげた。
2人は子供の様に涙目になると蹲って頭を擦った。その姿が型で抜いたかのように全く同じなのは流石双子というべきか。
「サガ、気持ちは分かりますがミロも出産の疲れでボロボロでしょう。日を改めてのほうが、あちらも楽だと思いますよ」
シオンの陰から現れたアテナに微笑みながら諭され、流石のサガも引きさがざるを得ない。
「仰せのままに」
深々と頭を下げたサガを、ニヤニヤ笑いをこらえながらカノンが見つめる。
「カノン、サガを止めてくれたこと、私からも礼を言います」
「勿体無きお言葉でございます」
サガに続き、カノンも頭を下げた。
「実は、2人にお願いがあってきたのです。これからシオンとお祝いの品を買いに行くのですが、その穴埋めを頼みたいのです」
「よいか、2人とも。喧嘩せずしっかり留守を守るのだぞ」
「「は、い」」
2人がぎこちなく頷いたのを確認すると、シオンとアテナは執務室を出ていった。
感嘆の声を上げたもの
「やっぱり、ミロが聖域から姿を消したのはそういう理由でしたか」
「うむ。めでたいことだな」
落ち着いて茶を啜るのは、ムウとアルデバランだ。その向かいに座ったシャカは、お茶請けのまんじゅうを頬張りながらむぅっと唇を尖らせた。
「早く子供を見せに来たまえ。まず最初に私に見せに来たならば、名付け親になってやらんこともない」
「あなたが名付け親になってしまったら、サガが血の涙を流して悔しがりますよ」
「違いない」
2人はサガが号泣しながら地面を叩きつける姿を想像して笑った。ムウは控えめにくすりと。アルデバランは豪快に。シャカだけは、つまらんとばかりに唇を尖らせたままだ。
「ん?さっきから何やら拗ねているようだが?どうしたシャカ」
「ずるい」
ぽつりとシャカが漏らした言葉に、ムウとアルデバランは顔を見合わせた。
「カミュばかりずるい。私も赤子を抱きたい。柔らかな髪に頬ずりして、乳臭い匂いを嗅ぎたい」
頬杖を突き、不機嫌な幼馴染に2人同時に吹きだした。
「あなたが子供好きだなんて知りませんでした」
「長い付き合いでも知らんことがあるものだな。俺も初耳だ」
「子供が好きなわけではない。赤子特有の崩れ落ちそうな感触が好きなんだ」
2人にからかわれてシャカの機嫌はますます悪くなる。ムウは拗ねてしまった幼馴染のために、とっておきの茶菓子を出すため席を立った。
酒を煽る者
堅物にしては珍しく、シュラは昼間からワインを開けた。同じテーブルには腐れ縁であるアフロディーテとデスマスクの姿がある。
「全く、処女神であるアテナに仕える身でありながら、ふしだらな…。俺はミロをそんな風に教育した覚えはない。挙句に、相手は同じく聖闘士のカミュだなんて、俺は、俺は…」
グズグズと鼻を啜りながら、シュラはワインのグラスを煽った。
「まぁ、そう泣くなよ。シュラ。アテナもシオンのじーさんも認めてくれたんだろ。だったら万々歳じゃねーか。それにしても、ミロはともかく、カミュがやらかすとはねぇ。ミロの奴、性格はお子ちゃまだが、体付は、おっと!」
デスマスクの鼻先を、真紅のバラが掠める。もちろん、投げたのはアフロディーテだ。
「デスマスク、いくら君でもミロのことを厭らしい目で見るのは止めたまえ」
不愉快そうに、酒の肴のチーズを齧ると「シュラ、君もいい加減鬱陶しい」と悲嘆にくれる同僚を切って捨てた。
「お前に分かるか!?目を掛けていた後輩二人に裏切られたんだぞ!その、その気持ちがぁわ゛がる゛がぁぁ」
意外にも泣き上戸なシュラは、机に突っ伏すとおいおいと泣きはじめた。その背をよしよしとデスマスクが撫でる。
そんな二人を横目に、アフロディーテがハンっと鼻で笑った。
「ミロがカミュを好いていたのなんて丸わかりだったじゃないか。惹かれあってる男と女が居れば、そこで何が起きるかなんてわかり切ったことだろ。だいたいねぇ、どんなに気を付けてたって出来てしまうときは出来てしまう物だよ。100%の避妊法なんてあるわけないんだから。そんなに泣き喚くくらいなら、ベッドの中まで見張っとけばよかったのに」
「おい、アフロディーテ。その辺で勘弁してやれよ。それ以上言うとシュラの奴立ち直れなくなるぞ」
やや怒り上戸の気があるアフロディーテを宥めながら、デスマスクはこっそりとため息をついた。
口では肯定しているように見えて、実はアフロディーテも怒っているのだ。二人を祝福したい気持ちと、蚊帳の外に置かれた腹立たしさを酒とシュラへの八つ当たりで紛らわせているのである。
(全く、めんどくせぇ奴らだぜ)
そう思いながらも、結局のところ二人を見捨てることは出来ないのだ。なんといっても同期だし、付き合いも情もその分深い。
「あ゛ぁぁぁー!後輩の不始末は俺の不始末だ!こうなったら切腹してアテナに詫びる」
ガバリと立ち上がると、シュラは自分の首に手刀を当てた。
「エクスカ「五月蠅い!」」
「全く、うちの子の誕生日を君なんかの命日といっしょくたにしないでくれ」
ぷりぷりと怒りながら、アフロディーテは新たなボトルを開ける。
「…アフロディーテ、止めてくれたのは嬉しいが…シュラの胸に白バラ刺さってんぞ」
助けるのが親切か、助けないのが親切か…デスマスクは悩んだ。
首を傾げたもの
(そんな、ペットに親友の名前を付けるほど寂しい思いをしていたなんて…。カミュ、気が付かなくてすまん。今度本物のミロを連れて遊びに行くからな!)
アイオリアはダンベルを握り締めながら、遠いシベリア(にいると思っている)の友を思った。
「お、産まれたか。祝いの品は何がいいかな?」
隣で腹筋をしながらアイオロスが言うと、アイオリアは「ん?」と首を傾げた。
「(これから餌代がかかるだろうから)肉とか魚とかがいいんじゃないかな?(あれ?カミュのペットは、アザラシだったか?白熊だったか?)」
「そうだな、しっかり食べていい乳を出してもらわなきゃな」
「うん、そうだね。(哺乳類という事は白熊か。ペンギンという事も考えられる?あれ??)」
微妙に噛みあわない会話をしながら、大らかな兄弟は体を鍛える。
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