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腐った妄想の吐きだし口。 現在は聖闘士星矢の蠍座のミロのハマっております。
2025/05/24 (Sat)12:06
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2015/06/25 (Thu)21:27
「お前、またいるの」

うんざりして吐き捨てた。
今日こそはゆっくりサボろうと泉にやってくると、またしても例の子供が水面を突いて一人遊びしている。
ここ半月ほどずっとこんな感じだ。

「何度も言うけど、ここは私のお気に入りの場所なの。消えてくれる?」

威圧的な態度に出てみるが、子供はどこ吹く風で欠伸を一つ。

「お前な~。話聞け!いい加減にしないと、蹴っ飛ばすぞ」

「みろ」

「は!?なに?」

「おれのなまえ、みろ」

「で?」

それ以上は何も言わず、どうでもよさそうに水遊びを再開した。
ムカつく。
が、流石の俺でもこんな痩せっぽちに暴力をふるうのは、胸糞悪い。
かといって、場所を譲るのは癪で、結局こいつの隣に腰を下ろす羽目になる。
ミロは相変わらずの鶏がらで、今日も鼻に詰め物がしてある。でも目の下の隈と不気味なほどの青白い顔は改善された。
いつも特に騒ぐでもなく、一人で水遊びをして、時々思い出したかのように俺に話しかける。
子供にしては静かで、不気味なくらいだ。

「お前さ、何で聖域に連れてこられたわけ?」

「んーと、たたかうひとになるんだって」

「だよね。聖闘士になるためにここにきたんだよね。だったらこんなところで遊んでちゃダメじゃない?」

優しく諭してみる。

「はなぢ、でたのよ」

ミロはいつぞやかと同じように、鼻を指さす。
なるほど、きつい訓練についていけなくて追い出された口か。
そもそも、こんな棒っきれみたいな子供に戦士になれという方が無理な話だ。

「サボるならサボるで、他の場所行ってよ。邪魔なの」

何十回と言った台詞を繰り返すと、ミロは急に水遊びを止めた。

やっと、いう事を聞く気になったか!
と思いきや、ミロは濡れた手をシャツの裾で拭いた。それから、脇に置いてあったカバンをがさごぞと漁ると、林檎を取り出した。

「はんぶん、して。おねえちゃん」

「何で?」

「ひとりじゃ、たべきれない」

「だからなに?どうでもいいから、どっかいって」

ミロは林檎を差し出したまま、石像のように動かない。仕方なく林檎を半分に割ってやると、小さい方に手を伸ばした。

「ありがとう」

ぺこりと頭を下げる。もさもさの髪がばさりと垂れてモップみたいだ。

「何でお前が礼を言うの?元々お前の林檎でしょ」

「いっしょに、たべてくれるから」

「なにそれ、意味わかんない」

林檎を投げ捨てて、走り去ってしまおうかと思った。
けれど、何とも言えない不安な顔でミロがこちらを見つめるから。
それもできなくなってしまって、仕方なく仮面を半分ずらして林檎を齧る。瑞々しく、甘酸っぱい味が口の中に広がった。

「おいしいね」

「あぁ」

「たべずらくない?」

「女聖闘士はね、素顔を見られたら責任取ってもらわなきゃなんないの」

「せきにん?」

「死んでもらうか、結婚してもらうか」

ミロは絶対に分かってない口調で「たいへんなのね」と言った。
大人ぶったその言い方に思わず笑ってしまう。

半分こした林檎は、あっという間に腹に納まった。隣を見ると、三分の一も食べてないそれを、ハンカチにくるむとカバンにしまった。

「もう、いいの?」

ミロはこくりと頷いた。「だいじにとっとく」とちょっと寂しそうな顔をした。
聖域にくる子供の大半は訳有が多い。もしかしたら、この子供も碌でもない事情で聖域に送り込まれたのかもしれない。

ゴーン、ゴーンと時計台の鐘が鳴る。
ミロは、「いかなきゃ」と呟くと猫みたいな仕草で立ち上がった。カバンを肩にかけ、ゆっくりと手を振る。

「おねえちゃん、またね」

「カノン。それが私の名前」

ミロが驚いたように目を丸くした。口の中で宝物でも扱うように「かのん」と何度も繰り返す。

「かのん、またね」

何が嬉しいのかくしゃりと顔を歪めると、今度こそ手を振りその場を去って行った。

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無題
カノンの女口調を真似ているのか、鶏がら君も女言葉になっているのがなんかカワユイですvV
ちょっと冷たいのが、とってもカノンっぽい!(笑)
ここから徐々に心の距離が近づいていくことを期待して、次回を楽しみに待ちます♪
ヒゲ 2015/06/25(Thu)23:23 編集
Re:無題
小さな男の子がお母さんの口調真似してるのって、可愛くないですか(*´ω`*)
あんな感じて、ミロがカノンに懐いてる証拠です。
カノンもなんやかんやで面倒見がよいタイプなのではないかと思ってます。
だって海将軍時代、同僚の大半は10代のお子様だもん。面倒見まくってましたよね、きっと。
春乃 2015/06/26(Fri)14:26
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