腐った妄想の吐きだし口。
現在は聖闘士星矢の蠍座のミロのハマっております。
2015/06/25 (Thu)21:27
「お前、またいるの」
うんざりして吐き捨てた。
今日こそはゆっくりサボろうと泉にやってくると、またしても例の子供が水面を突いて一人遊びしている。
ここ半月ほどずっとこんな感じだ。
「何度も言うけど、ここは私のお気に入りの場所なの。消えてくれる?」
威圧的な態度に出てみるが、子供はどこ吹く風で欠伸を一つ。
「お前な~。話聞け!いい加減にしないと、蹴っ飛ばすぞ」
「みろ」
「は!?なに?」
「おれのなまえ、みろ」
「で?」
それ以上は何も言わず、どうでもよさそうに水遊びを再開した。
ムカつく。
が、流石の俺でもこんな痩せっぽちに暴力をふるうのは、胸糞悪い。
かといって、場所を譲るのは癪で、結局こいつの隣に腰を下ろす羽目になる。
ミロは相変わらずの鶏がらで、今日も鼻に詰め物がしてある。でも目の下の隈と不気味なほどの青白い顔は改善された。
いつも特に騒ぐでもなく、一人で水遊びをして、時々思い出したかのように俺に話しかける。
子供にしては静かで、不気味なくらいだ。
「お前さ、何で聖域に連れてこられたわけ?」
「んーと、たたかうひとになるんだって」
「だよね。聖闘士になるためにここにきたんだよね。だったらこんなところで遊んでちゃダメじゃない?」
優しく諭してみる。
「はなぢ、でたのよ」
ミロはいつぞやかと同じように、鼻を指さす。
なるほど、きつい訓練についていけなくて追い出された口か。
そもそも、こんな棒っきれみたいな子供に戦士になれという方が無理な話だ。
「サボるならサボるで、他の場所行ってよ。邪魔なの」
何十回と言った台詞を繰り返すと、ミロは急に水遊びを止めた。
やっと、いう事を聞く気になったか!
と思いきや、ミロは濡れた手をシャツの裾で拭いた。それから、脇に置いてあったカバンをがさごぞと漁ると、林檎を取り出した。
「はんぶん、して。おねえちゃん」
「何で?」
「ひとりじゃ、たべきれない」
「だからなに?どうでもいいから、どっかいって」
ミロは林檎を差し出したまま、石像のように動かない。仕方なく林檎を半分に割ってやると、小さい方に手を伸ばした。
「ありがとう」
ぺこりと頭を下げる。もさもさの髪がばさりと垂れてモップみたいだ。
「何でお前が礼を言うの?元々お前の林檎でしょ」
「いっしょに、たべてくれるから」
「なにそれ、意味わかんない」
林檎を投げ捨てて、走り去ってしまおうかと思った。
けれど、何とも言えない不安な顔でミロがこちらを見つめるから。
それもできなくなってしまって、仕方なく仮面を半分ずらして林檎を齧る。瑞々しく、甘酸っぱい味が口の中に広がった。
「おいしいね」
「あぁ」
「たべずらくない?」
「女聖闘士はね、素顔を見られたら責任取ってもらわなきゃなんないの」
「せきにん?」
「死んでもらうか、結婚してもらうか」
ミロは絶対に分かってない口調で「たいへんなのね」と言った。
大人ぶったその言い方に思わず笑ってしまう。
半分こした林檎は、あっという間に腹に納まった。隣を見ると、三分の一も食べてないそれを、ハンカチにくるむとカバンにしまった。
「もう、いいの?」
ミロはこくりと頷いた。「だいじにとっとく」とちょっと寂しそうな顔をした。
聖域にくる子供の大半は訳有が多い。もしかしたら、この子供も碌でもない事情で聖域に送り込まれたのかもしれない。
ゴーン、ゴーンと時計台の鐘が鳴る。
ミロは、「いかなきゃ」と呟くと猫みたいな仕草で立ち上がった。カバンを肩にかけ、ゆっくりと手を振る。
「おねえちゃん、またね」
「カノン。それが私の名前」
ミロが驚いたように目を丸くした。口の中で宝物でも扱うように「かのん」と何度も繰り返す。
「かのん、またね」
何が嬉しいのかくしゃりと顔を歪めると、今度こそ手を振りその場を去って行った。
うんざりして吐き捨てた。
今日こそはゆっくりサボろうと泉にやってくると、またしても例の子供が水面を突いて一人遊びしている。
ここ半月ほどずっとこんな感じだ。
「何度も言うけど、ここは私のお気に入りの場所なの。消えてくれる?」
威圧的な態度に出てみるが、子供はどこ吹く風で欠伸を一つ。
「お前な~。話聞け!いい加減にしないと、蹴っ飛ばすぞ」
「みろ」
「は!?なに?」
「おれのなまえ、みろ」
「で?」
それ以上は何も言わず、どうでもよさそうに水遊びを再開した。
ムカつく。
が、流石の俺でもこんな痩せっぽちに暴力をふるうのは、胸糞悪い。
かといって、場所を譲るのは癪で、結局こいつの隣に腰を下ろす羽目になる。
ミロは相変わらずの鶏がらで、今日も鼻に詰め物がしてある。でも目の下の隈と不気味なほどの青白い顔は改善された。
いつも特に騒ぐでもなく、一人で水遊びをして、時々思い出したかのように俺に話しかける。
子供にしては静かで、不気味なくらいだ。
「お前さ、何で聖域に連れてこられたわけ?」
「んーと、たたかうひとになるんだって」
「だよね。聖闘士になるためにここにきたんだよね。だったらこんなところで遊んでちゃダメじゃない?」
優しく諭してみる。
「はなぢ、でたのよ」
ミロはいつぞやかと同じように、鼻を指さす。
なるほど、きつい訓練についていけなくて追い出された口か。
そもそも、こんな棒っきれみたいな子供に戦士になれという方が無理な話だ。
「サボるならサボるで、他の場所行ってよ。邪魔なの」
何十回と言った台詞を繰り返すと、ミロは急に水遊びを止めた。
やっと、いう事を聞く気になったか!
と思いきや、ミロは濡れた手をシャツの裾で拭いた。それから、脇に置いてあったカバンをがさごぞと漁ると、林檎を取り出した。
「はんぶん、して。おねえちゃん」
「何で?」
「ひとりじゃ、たべきれない」
「だからなに?どうでもいいから、どっかいって」
ミロは林檎を差し出したまま、石像のように動かない。仕方なく林檎を半分に割ってやると、小さい方に手を伸ばした。
「ありがとう」
ぺこりと頭を下げる。もさもさの髪がばさりと垂れてモップみたいだ。
「何でお前が礼を言うの?元々お前の林檎でしょ」
「いっしょに、たべてくれるから」
「なにそれ、意味わかんない」
林檎を投げ捨てて、走り去ってしまおうかと思った。
けれど、何とも言えない不安な顔でミロがこちらを見つめるから。
それもできなくなってしまって、仕方なく仮面を半分ずらして林檎を齧る。瑞々しく、甘酸っぱい味が口の中に広がった。
「おいしいね」
「あぁ」
「たべずらくない?」
「女聖闘士はね、素顔を見られたら責任取ってもらわなきゃなんないの」
「せきにん?」
「死んでもらうか、結婚してもらうか」
ミロは絶対に分かってない口調で「たいへんなのね」と言った。
大人ぶったその言い方に思わず笑ってしまう。
半分こした林檎は、あっという間に腹に納まった。隣を見ると、三分の一も食べてないそれを、ハンカチにくるむとカバンにしまった。
「もう、いいの?」
ミロはこくりと頷いた。「だいじにとっとく」とちょっと寂しそうな顔をした。
聖域にくる子供の大半は訳有が多い。もしかしたら、この子供も碌でもない事情で聖域に送り込まれたのかもしれない。
ゴーン、ゴーンと時計台の鐘が鳴る。
ミロは、「いかなきゃ」と呟くと猫みたいな仕草で立ち上がった。カバンを肩にかけ、ゆっくりと手を振る。
「おねえちゃん、またね」
「カノン。それが私の名前」
ミロが驚いたように目を丸くした。口の中で宝物でも扱うように「かのん」と何度も繰り返す。
「かのん、またね」
何が嬉しいのかくしゃりと顔を歪めると、今度こそ手を振りその場を去って行った。
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