腐った妄想の吐きだし口。
現在は聖闘士星矢の蠍座のミロのハマっております。
2015/07/11 (Sat)08:38
サガから目覚めの悪い話を聞いてしまった以上、何か策を講じなければなるまい。
詳しく聞き出した話によると、ミロは両親が蒸発し、親戚に疎まれながら育ったらしい。
ならば、話は簡単だ。ちょっと傷口をえぐってやればいい。本人が望もうが望むまいが、あいつの居場所はここしかないのだから。
林檎を齧りながら、隣のミロを盗み見る。子供とは思えない枯れ枝の様な手に、痩せこけた頬。今から俺は、残酷な話をする。こんな幼い子供を傷つけるやり方は、善人ぶったあいつらには出来まい。使えないと分かれば、あっさりと捨てるくせに。
「ミロってば、林檎半分食べるのに随分と時間がかかるのね。いつまで経っても痩せっぽちだし、どうして?」
「え?」
意味が分からないとばかりに、瞬きをした。大きな碧い瞳に不安の色がくっきりと浮かぶ。仮面越しにその瞳を捕え、ゆっくりとでも恐怖をあおる口調で話を続ける。
「いつも林檎ばかり食べて、お前の親は叱らなかったの?それとも、叱ってくれる親もいない?」
いつもと様子が違う俺に、ミロは顔を歪めた。林檎がぽろりと手から落ちる。だがそれにすら気が付かず、オロオロと視線を彷徨わせた。
「かのん?こわい。やめて」
「ねぇ、今までどんな生活してきたの?ここに来て忘れちゃった?でも大丈夫、すぐ思い出せるよ。だって、役立たずはいらないもの」
「かのん!!」
金切り声をあげて、ミロが俺の服を掴んで揺さぶる。「やめて、やめてよ」って必死で懇願するミロを乱暴に払いのけた。
「思い出してきた?今までの生活、さぞ惨めだったんでしょ?ここに来た時からボロボロだったものね。ご飯、食べない悪い子だから苛められてたの?」
「ちがう、ちがうもん。おれ、わるいこじゃないよ。おじさんも、おばさんも、ごはんたべちゃ、だめって。おれはかぞくじゃないからって…だから、りんご、だれもたべない、すっぱいりんご…」
「おじさんも、おばさんもがっかりするね。漸くいなくなったお荷物が、また戻ってくるんだもの。ご飯も食べられない落ちこぼれじゃしかたないよね、捨てられちゃっても文句は言えないね」
碧い両目から涙が溢れだした。縋り付き、泣きじゃくりながら、「いいこにするから、すてないで」と繰り返す姿は哀れだ。
ー耳鳴りがした。ー
『お願い、ちゃんと仮面被るから!女の子でも我慢するから、いらないって言わないで!!』
頭の中に浮かぶ光景。
まだ幼くて、自分の立場が理解できていなかった頃。サガと同じ格好がいい、女装は嫌だと泣き喚いた俺。その度に侍女は言った。
『我が儘言う子はいりません』
「消えろ、消えてしまえ!!」
忌々しい残像を消したくて、声を張り上げた。だが、消えたのは残像ではなく泣きじゃくっていたミロの声。ミロは怯えた瞳で俺を見つめると、唇を震わせ、全速力で(たぶん、彼の中では)逃げ出した。
「あ!」
しまった。ちょっと苛めて、適当なところで隠し持っていたパンを食わせて、少しずつ食事をとるように促すつもりだったのに。これじゃ、ただ恐怖心を煽っただけだ。
ついでに、自分のトラウマまで掘り起こした。
「バカみてぇ」
※※※※
夕方、自宅にサガが乗り込んできた。
要件も言わず、真っ先に張り手が飛んできた。
「カノン!貴様ミロに何をした!?」
「何って、別に。俺は本当のことを言ったまでだ。飯も食えない落ちこぼれは捨てられるとな」
「お前、よくもそんな台詞が言えたな。あの子がどんなに心を痛めたか分からんのか!?」
「五月蠅い!綺麗ごとはたくさんだ!!俺の言ったことに間違いはあるか!?優しい振りをし、手を差し伸べ、使えないと分かれば切り捨てる。それが聖域のやり方だろう!!現にミロだって、このままの状態でいたら、死ぬのが分かっていて元の場所に捨てるんだろうが!!」
流石のサガも、図星を突かれて言葉を詰まらせた。それだけ、ミロに手を焼いてた証拠だ。
「帰れよ。俺は機嫌が悪いんだ。早く失せろ!」
近くに合った皿を投げつけると、サガは渋々退散していった。
「俺だって、好きで言ったんじゃねぇよ」
ずるずるとその場にしゃがみこむ。目からぽたぽたと涙が出てきた。
全く、柄にもないことをするからこんな目に合う。もう、あのガキと関わるのはよそう。
いや、あれだけ酷いことを言われたら向こうが来ないか。
胸の空洞に冷たいものをねじ込まれた心地がして、暫く泣いた。
詳しく聞き出した話によると、ミロは両親が蒸発し、親戚に疎まれながら育ったらしい。
ならば、話は簡単だ。ちょっと傷口をえぐってやればいい。本人が望もうが望むまいが、あいつの居場所はここしかないのだから。
林檎を齧りながら、隣のミロを盗み見る。子供とは思えない枯れ枝の様な手に、痩せこけた頬。今から俺は、残酷な話をする。こんな幼い子供を傷つけるやり方は、善人ぶったあいつらには出来まい。使えないと分かれば、あっさりと捨てるくせに。
「ミロってば、林檎半分食べるのに随分と時間がかかるのね。いつまで経っても痩せっぽちだし、どうして?」
「え?」
意味が分からないとばかりに、瞬きをした。大きな碧い瞳に不安の色がくっきりと浮かぶ。仮面越しにその瞳を捕え、ゆっくりとでも恐怖をあおる口調で話を続ける。
「いつも林檎ばかり食べて、お前の親は叱らなかったの?それとも、叱ってくれる親もいない?」
いつもと様子が違う俺に、ミロは顔を歪めた。林檎がぽろりと手から落ちる。だがそれにすら気が付かず、オロオロと視線を彷徨わせた。
「かのん?こわい。やめて」
「ねぇ、今までどんな生活してきたの?ここに来て忘れちゃった?でも大丈夫、すぐ思い出せるよ。だって、役立たずはいらないもの」
「かのん!!」
金切り声をあげて、ミロが俺の服を掴んで揺さぶる。「やめて、やめてよ」って必死で懇願するミロを乱暴に払いのけた。
「思い出してきた?今までの生活、さぞ惨めだったんでしょ?ここに来た時からボロボロだったものね。ご飯、食べない悪い子だから苛められてたの?」
「ちがう、ちがうもん。おれ、わるいこじゃないよ。おじさんも、おばさんも、ごはんたべちゃ、だめって。おれはかぞくじゃないからって…だから、りんご、だれもたべない、すっぱいりんご…」
「おじさんも、おばさんもがっかりするね。漸くいなくなったお荷物が、また戻ってくるんだもの。ご飯も食べられない落ちこぼれじゃしかたないよね、捨てられちゃっても文句は言えないね」
碧い両目から涙が溢れだした。縋り付き、泣きじゃくりながら、「いいこにするから、すてないで」と繰り返す姿は哀れだ。
ー耳鳴りがした。ー
『お願い、ちゃんと仮面被るから!女の子でも我慢するから、いらないって言わないで!!』
頭の中に浮かぶ光景。
まだ幼くて、自分の立場が理解できていなかった頃。サガと同じ格好がいい、女装は嫌だと泣き喚いた俺。その度に侍女は言った。
『我が儘言う子はいりません』
「消えろ、消えてしまえ!!」
忌々しい残像を消したくて、声を張り上げた。だが、消えたのは残像ではなく泣きじゃくっていたミロの声。ミロは怯えた瞳で俺を見つめると、唇を震わせ、全速力で(たぶん、彼の中では)逃げ出した。
「あ!」
しまった。ちょっと苛めて、適当なところで隠し持っていたパンを食わせて、少しずつ食事をとるように促すつもりだったのに。これじゃ、ただ恐怖心を煽っただけだ。
ついでに、自分のトラウマまで掘り起こした。
「バカみてぇ」
※※※※
夕方、自宅にサガが乗り込んできた。
要件も言わず、真っ先に張り手が飛んできた。
「カノン!貴様ミロに何をした!?」
「何って、別に。俺は本当のことを言ったまでだ。飯も食えない落ちこぼれは捨てられるとな」
「お前、よくもそんな台詞が言えたな。あの子がどんなに心を痛めたか分からんのか!?」
「五月蠅い!綺麗ごとはたくさんだ!!俺の言ったことに間違いはあるか!?優しい振りをし、手を差し伸べ、使えないと分かれば切り捨てる。それが聖域のやり方だろう!!現にミロだって、このままの状態でいたら、死ぬのが分かっていて元の場所に捨てるんだろうが!!」
流石のサガも、図星を突かれて言葉を詰まらせた。それだけ、ミロに手を焼いてた証拠だ。
「帰れよ。俺は機嫌が悪いんだ。早く失せろ!」
近くに合った皿を投げつけると、サガは渋々退散していった。
「俺だって、好きで言ったんじゃねぇよ」
ずるずるとその場にしゃがみこむ。目からぽたぽたと涙が出てきた。
全く、柄にもないことをするからこんな目に合う。もう、あのガキと関わるのはよそう。
いや、あれだけ酷いことを言われたら向こうが来ないか。
胸の空洞に冷たいものをねじ込まれた心地がして、暫く泣いた。
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