後半戦まいります。いろいろゴメン。特にカミュ……。苦情は謹んでお受けします<m(__)m>

[2回]

マイクを握り締めて、何かに挑む様に紫龍が画面を睨む。モニターに映し出された文字は「愛〇君へ」。

「僕の隣に　いつもきみが居る事…」　

　あれ？どっかで聞いたような…でも思い出せない。こめかみを揉みながら、思い出そうとすればするほど記憶はこんがらがって出てこない。

「ミロ、この曲聞いたことあるんですか？」

「この歌だったら、誰かが布教活動してても驚かねーぜ」

　瞬と星矢に聞かれても答えることが出来ず、カミュの知識を借りることにした。

「なぁ、カミュこの歌どっかで聞いたことが有るような気がするんだが…」

「な、なんだと！？それはまさか誕生日にか！？」

「え？誕生日？何のことだ？？」

「知らんのか。好きな子の誕生日に「愛〇君へ」を歌いながら愛を告げると高確率で恋人になれるというジンクスが聖域で流行っているのだ。成功例としてもっとも有名なのがアルデバラン」

「あ！思い出した。１０歳に見える２４歳女官のハートを鷲掴みで一時騒がれたな」

「え？１０歳に見える２４歳！！どんなだよ」

「アルデバランって、外見によらずロマンティックなんですね。意外だな」

「ズバッと言ったな、瞬」

　それぞれの感想を述べる三人。この時点で、紫龍は辛うじて歌い続けている。チラチラこちらに視線を送っているが。

「アイオリアも歌えば良かったのに、魔鈴さんの誕生日にさ。３月だからもう過ぎちまったよ」

「あぁ、それならご心配なく。来年の誕生日に間に合うように、アイオロスがハーモニカ練習してるぞ」
　
　俺としては、ちょっと過保護だと思うが彼的には当たり前のことらしい。弟の恋愛成就に協力することが。

「ん？何でアイオロス何ですか？」

「アイオリアが歌うときの伴奏に決まってるだろ。アイオロスは弟思いだからな。私も、見習わなければと思っている」

　その言葉に青銅４人組は顔を青くして、首をちぎれるんじゃないかと思うほど、横に振った。

「ない！ないないない、絶対に、ない！！いくら姉さんでもそこまでしない！！！」

「僕も、好きな人に告白するときに兄さんがついて来たら嫌だなぁ」
　
　うん、それが普通の思春期の少年の反応だよな。ちらりと視線をカミュに移すと、キラキラする瞳で氷河を見つめている。

「私は楽器は苦手だからな。好きな子が出来たら早めに言うんだぞ、氷河」

「いや、遠慮します。わが師カミュ」

　あれま、流石のシベリア師弟も恋愛ゾーンは秘密主義か。
　断られると思っていなかったカミュは、見事に石化した。まぁ、仕方ないよな、早く弟子離れしろよ、カミュ。
　視線を移すと紫龍と目が合った。

「あ、うちは適度に放任主義なんで」

　両手を振って否定しているが、自分の養女と弟子がくっつくようそれとなく仕向けるのは十分過干渉だと思うがな。
　そんなこんなで曲は終わり、紫龍もがっくりと項垂れた。

「全滅、だと」

「まさか、誰も最後まで歌えないなんて…」

「いや、だがまだカミュとミロがいる。妨害をしている張本人だが…」

「この際、最後まで歌ってくれればいい。歌ってくれさえすれば！」

　なんだ？この青銅たちの打ちひしがれっぷり。一輝でも召喚しそうだな。多分、絶対来ないだろうけど。

「さて、次は私か」

「あぁそうだ。何入れたん…」

　画面に映し出されるアンパン男…。

「ほう、映像が出るのか。では、おれはすてきな　ばいきん…」

　凍った空気の室内。一人淡々とバイキン男のうたを歌い続けるカミュ…ハート強いな。
　そんな中、いち早く立ち直ったのは紫龍。流石は老師の弟子だ。

「聖域ではアンパン男が流行ってるんですか？」

「いや、そんな話は聞いたことがない」

「サガが、カノンの情操教育のためにＤＶＤを取り寄せたのだ。なんでもこれがいいとアイオロスに勧められたらしくて、私も弟子の情操教育の一環としてどうだと勧められたのだが…見るか、氷河よ」

　マイクを横に置き、カミュが皆の方を向き説明する。ってか、君歌ってる最中に話に入ってきちゃダメだろ。
　話を振られた氷河は顔を真っ赤にして「見ません！」と叫んだ。

「そういうと思ったので、丁重に断っておいた。が、このバイキン男の声、聞けば聞くほどアイザックに似ているので、他人とは思えなくなってしまってな。ＤＶＤ全巻をそろえてしまった。見たかったらいつでも貸せるぞ」

「借りません！！」

「相変わらずの弟子馬鹿だな」

「んーと、流石にフォローしきれん。星矢に同意する」

　俺たちの呆れ混じりの視線など気にすることなく、カミュは最後の「ハヒフヘホ」を歌い終え、マイクは俺の手に移る。

「残るはミロただ一人」

　青銅四人の熱い視線が注がれる。だから、お前らさっきから何と戦ってんだ？？
　画面に「さく△びと」の文字が出る。マイクを握る直すと、息を吸った。

「喜びが舞う春を思う…」

　この歌も星矢が歌っていた曲と同じくＢＬＥＡ×Ｈ関連だったりする。
　実は、シオン様主催の一週間耐久ＤＶＤ鑑賞会に俺も参加してたり、なんかする。ムウやサガにバレたら確実に説教＋二人による規則正しい監禁生活になるのがわかってるから秘密にしておくけれど。
　今度のＤＶＤ鑑賞会はカミュも誘ってみようか。確か、かなり奇抜な髪形のマッドサイエンティストの声優、バイキン男と同じだったはず。カミュもハマってくれたら嬉しい。そしたら一緒に、漫画集めて、フィギア集めて、カミュは頭いいからキャラ考察とか得意そう…一緒に卍〇ごっこしたり、それから…。
　カミュの顔を見ながら、にっこりほほ笑む。何故か、カミュは驚いた顔をした。

「愛してると伝えたくて伝えないのは　忘れてほしい…「ミロォォォ！！！」！？」

　顎に強烈な一撃。それがカミュの頭突きだと気が付いたのは、イスから転げ落ちた後だった。

「ちょ、なんだカミュ！！」

「わせｄｒｆｔｇｙふじこｌｐ；」

　がっちりとカミュにホールドされたまま、なんかよく分からんがカミュは泣きじゃくってるし青銅たちのうち三人はそっと目を逸らされた。氷河が目から滝のような涙を流し、がっちりと俺の両手を掴む。

「ミロ、どうかわが師カミュを……っすっ末永く、お願いします！！」

「え？何の話だ？と言うか、なんで君まで泣いてるんだ？」

「ミロ～！このカミュ、お前をいっしょ、うぅ…いっしょっ…」

「一体何なんだ！？」

　こうして、誰もまともに歌えぬまま初めてのカラオケは幕を閉じたのだった。


ＥＮＤ

　アルデバランの恋人は、冥王十二宮編で出てきた女の子です。ロリデバラン呼ばわりされてるのが不憫だったので、すっごく童顔の成人女性ってことにしました(;^ω^)