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腐った妄想の吐きだし口。 現在は聖闘士星矢の蠍座のミロのハマっております。
2025/05/24 (Sat)06:17
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2015/11/28 (Sat)07:25
シベリアで弟子をとるようになってから早4年。定期報告の為に半年ぶりに聖域に戻った私は、天蠍宮の前で顔を顰めた。
 宮の入口で、雑兵が倒れている。背中には矢座のトレミーの矢が幾本も刺さり、おびただしい血が石段を汚している…ようにみえるが。

「ミロ、血のりに砂糖を加えるのは口に含むときだけでよいのだ。背中に使用する分まで砂糖を入れたせいで、蟻がたかっているぞ」

 その言葉に、ミロは慌てて体を起こすとシャツを脱ぎ捨てた。カタンと音を立てて背中の矢が石畳の上に落ちる。一本拾い上げてみれば、それは紛れもなくトレミーの矢だった。先は潰してあるが。

「どうりで体がもぞもぞすると思ったら…。せっかくの苦労が水の泡だ。こんなことなら、いつも通り室内でやればよかった!」
 
 バタバタとシャツを振って蟻を落とす。髪にもついているので、手で払ってやった。
 全く、昔から後先考えぬ男だ。時々、自分の弟子の方が知能指数が高いのではないかと心配になる。

「…どれくらい死体を演じてたんだ?」

 ミロは口をへの字に結んだまま、首を傾げると「一時間くらいか」と答えた。
 一時間…。つまらない悪戯の為に随分と無駄な時間と労力をつぎ込んだものだ。その間、ここを通った者のことを思うと、あきれ果て「掃除が大変だな」と呟くのがやっとだった。

「せめて君が驚いてくれたら、よかったんだがな。さて、これから報告だろう、行ってくるといい。夕飯くらいは付き合ってくれるんだろう?」

「すまんが、今日は無理だ。修行に必要な資料をまとめなければならないのでな」

「フラれてしまったか。あまり根詰めるなよ。君が体を壊したら可愛い弟子が泣くぞ」

「心得ているさ」

 軽いハグを交わし、ミロと別れる。彼はこれから、一人であの後始末をするのだろう。全くご苦労なことだ。
 石段を登り、教皇宮までたどり着くと法衣姿のアフロディーテと出会った。

「今回は何だった?」

「矢が刺さった雑兵だった」

「ほう。雑兵か。いろいろ考えるものだね。確かこれで4作目だろ?」

「…5作目だ」
 
 一作目は、聖衣を纏って胸にブラッディ―ローズが突き刺さっていた。一瞬驚いたが、白バラを染めているのが絵具だとすぐにわかってミロを嗜めた。
 二作目は私服でロープが首に巻き付いていた。「黄金聖闘士を絞殺できる者がそうそういるはずなかろう」と言うと、ミロは満足そうにくくくと笑った。
 三作目は練習着で倒れていて、背中には派手な刀傷がついていた。本人曰く、「シュラのエクスカリバーをイメージしたんだ」とあっけらかんと言っていた。
 四作目は練習着で頭に斧が刺さっていた。あの、斧が刺さったまま茶を出された時はかなりシュールだった。血のりの色とハーブティーの色がそっくりで、飲む気が失せた。ミロなりのブラックジョークだったのだろか?いや、あいつにそこまでの思考はないと思いたい。
 変な思い出に意識を飛ばしていると、「ところで」とアフロディーテの声が耳に届いた。

「どうしてミロはそんな悪戯をするんだろうね?」

「さぁな。こればっかりは私にも分からん」

 アフロディーテは意味ありげに笑うと、仕事に戻っていった。私も自分の用事を済ませるために先を急いだ。


※※※※※※※※※※※※※※※

 調べものがひと段落したのは、深夜の時間帯に差し掛かってからだった。これから集めたデータをもとに訓練の内容を検討し直さなければならない。成長期にあわせて食事内容も見直さなければ…。
 どっと疲れが出てきて、眉間を揉んだ。お茶でも飲んで一息入れることにしよう。重い腰を上げると、キッチンへと向かった。
 湯を沸かしている間に、道具を用意する。主が留守にしていても、女官たちが定期的に手入れをしてくれているので、宮の中はいつでも清潔だ。
 茶葉を出そうと戸棚を開けて、そこに見慣れない缶を見つけた。
 はて?これは何だ?
 怪訝に思いながら缶を手に取り開けてみる。キッチンに漂う強めの香りは、どこかで嗅いだ覚えがあった。だが、なかなか記憶と嗅覚が結びつかずに首をひねっていると、蓋の裏に小さな紙切れが貼り付けてあるのに気が付いた。

『お疲れさま。このハーブティー、血行を良くしたり、消化を助けたり、兎に角体にいいらしいぞ。弟子の育成で大変だろうが、自分の体も大切にな』

 名前なんて書いてなくても分かる。右上がりの癖のあるこの文字は、間違いなくミロの字だ。

「そうだ、この茶は!」

 頭に斧が刺さったミロが淹れてくれた茶だ。あの日、ミロはあのハーブティーを土産にとくれたのだ。だが、シベリアに帰還するために荷造りをしている最中に氷河が熱を出したと連絡が入って、焦って荷物にいれそびれた。たぶん、ベッドの脇にでも落ちていたものを掃除にきた女官か誰かがこの棚に置いておいてくれたのだろう。

『どうしてミロはそんな悪戯をするんだろうね?』

 不意に、アフロディーテの問いかけが蘇る。
 親友が奇行に走る理由、それは。

「寂しかった、のか」

 昔は、一晩中星を見ながら語り合ったり、森の奥で秘密の鍛錬をしたり、いつだって私たちは一緒だった。
 それなのにシベリアに渡ってからは、なれない弟子の育成に忙しくて、出す手紙と言えば帰還の知らせだけ。たまの語らいも私の口から出る殆どの話題は弟子の成長のことばかり。『離れていても心は繋がっている』そんな都合のいい言葉で、自分の怠慢を誤魔化していた。聖域で私の帰りを待つミロの気持ちを考えていなかった。ミロはこんなにも私を気にかけていてくれたのに…。
 沸かしたての湯でハーブティーを淹れると、急いで自室に戻った。夜が開けるまでになんとしてでも切りの良い所まで仕上げねば。そして、朝食をミロと一緒に食べるのだ!

※※※※※※※※※

「すまんな、バタバタしてしまって」

「気にするな。お互い様だ」

 結局、二人でゆっくりできたのはあの朝食の時だけだった。後はお互いに職務で忙しくて、碌に話せぬまま出立の日を迎えた。

「ミロ、お前が死んだ振りをしていいるのは…」

「ん?」

「いや、見慣れると面白いな」

「そう言われると、気合が入る」

 昔と変わらない、悪戯小僧の顔でミロが笑う。だから私も顰め面で「調子に乗るなよ」と釘を刺す。昔と同じように。

 
 聖域に帰ると友が必ず死んだ振りをしている。
 ちょっと褒めると調子に乗るから、対応はできるだけクールに。


おまけ

「…今回は随分と頑張ったな…」
 
 天蠍宮のプライベートスペースへと繋がるドアを開けると、そこには四肢を飛散させた巨大蠍の着ぐるみがあった。
 まさかとは思うが、これをミロが縫ったのだろうか
 巨大蠍は、完全に息の根が止まっていないようでカタカタと痙攣している。そしてその鋏の先には何か文字が書いてあった。

『おかえり』

 血のりで書かれた文字を見て、返事の代わりに愛しい親友をグロテスクな着ぐるみごと抱きしめた。

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ミロさん可愛いな(^^)
構ってもらいたくてあの手この手で興味を引こうとするミロさんが可愛いです(^^)
でも、あの手この手の方法が何故に死んだふり(^^;(笑)そんな発想をするミロさんが大好きだー!(^o^)

おお!カミュさん誕に〇〇フェチなカミュさん書いて頂けるんですか\(^o^)/おねだりした甲斐があります(^o^)ありがとうございます\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/

ワールドネバーランドって好みによりけりですがハマると面白いです。とか言いながら昔据え置きでプレイしてた時は二代で止めてましたが…(^^;
スマホの方は空き時間に手軽に出来るんで今のところ楽しめてます。ってこちらもまだ二代目ですが。
ですよねぇ。自分が気に入って選んだ・作ったキャラって愛着わきますよね。

何時もお返事ありがとうございます(^^)
お邪魔しました(^^)


尾羽っSUN 2015/12/10(Thu)15:27 編集
Re:ミロさん可愛いな(^^)
 実はこの話元ネタがありまして「家に帰ると妻が必ず死んだ振りをしています」というボカロの曲です。さらには書籍化もされています。よくニコ動でネタ動画としてつかわれていて、LCのデジェルとユニティの手書きMADもあります。だからきっと、ミロとカミュで書いた人が他にもいると思います(;^ω^)
 ND連載再開したそうですね。尾羽っSUN様のレビュー楽しみにしてます。そろそろ蠍さんと水瓶さん出てくるんですかね。金魂で散々だった分、この二人には活躍してほしいです(>_<)前聖戦の時、先代青銅さんたちは何してたんでしょうね?やっぱり大人しく場外待機だったんでしょうか??
春乃 2015/12/14(Mon)12:46
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春乃
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