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腐った妄想の吐きだし口。 現在は聖闘士星矢の蠍座のミロのハマっております。
2025/05/24 (Sat)04:20
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2015/12/28 (Mon)23:50
十歳くらいイメージでお願いします。まだギリギリ親友。恋愛感情無しで。甘え下手で弱ってるカミュと能天気で無意識お母さんなミロ。
 リハビリで書いたSSですので、いつも以上に拙いのはご容赦ください。


 
 ベッドの上で、枕をクッション代わりにベッドサイドにもたれ掛かった親友がシャツの裾を捲り上げて手招きをする。

「ほら、早く来いよ」

「いや、べつに私は…」
 
 ミロは困惑し尻ごみをする私の腕をじれったそうに引っ張ると、有無を言わさず膝の上に座らせた。
 全く、なぜこうなった!?
 数時間前の自分の発言に後悔しつつ、大げさにため息をついた。


 
 麗かな昼下がりの公園。何の面白味もない女性がベンチに座っている。首にケープを巻き胸から下は隠されているが、何かを抱えているのはその服の膨らみで分かる。傍らには真新しいベビーカー。だが、中に赤ん坊はいない。そう、赤ん坊は今食事の真っ最中。母親の腕に抱かれ、一心不乱に乳を吸っているのだろう。残念ながら、その顔を見ることは出来ないが、きっと安心しきっているにちがいない。母親は、愛情が満ち溢れた顔で、ケープ越しに我が子を見つめている。
 まさに「平和」の一言に尽きる、ごくありふれた情景だ。それなのに、さきほどから重い鉛のようなものが、胸の内に沈んでいる。
 今さら、なんだというのだ。私は黄金聖闘士。くだらない感傷に惑わされるな。
 そう自分を叱責してみても、一向に胸の内は晴れない。

「なぁ、カミュ。何を真剣に見つめているんだ?」
 
 ミロの問いかけに、随分と長いことそれを見つめていたことを思い知らされた。反射的に「なんでもない」と答えたが、動物的な勘が鋭い親友はそれで納得はしてくれなかった。ただ無理やり聞き出すようなまねはせず、大きな瞳でじっとこちらを見つめている。
 昔から、ミロのこの顔が苦手だ。こんなふうに見つめられると、胸の内を覗かれている気持になる。流しきれずに、隠しておきたい重くドロドロした部分を話す羽目になるのだ。
 私は観念して口を開いた。

「昔、少し話したと思うが。私の両親は、私をずっと疎んじていた。私の故郷では、紅い瞳は悪魔の印。二人とも私のことを恐怖と嫌悪が入り混じった目で見ていた。だがな、時々思うのだ。例え悪魔の子供だとしても、生まれたばかりの赤子は乳を飲まねば死んでしまう。私の母親は、私に乳を与え、生かしてくれた。それは、親としての責任の為か、それとも一欠けらの愛情があったのだろうか。そんなつまらないことを考えていたのだ」

 こんなみっともない感傷に浸っているのは、きっとこの前初めて人を殺めたからだ。粛清任務もこなせるようになって一人前。分かってはいるが、相手を屠ったその瞬間体の震えが止まらなかった。私の紅い瞳や髪を気味悪がり、「お前は悪魔付だ。今に人を傷つけて喜ぶ子になるにちがいない」と呪いのように言っていた両親の顔が浮かんだ。
 両親の予言通り人を傷つける私は、誰からも愛されることのない存在なのではないか。そんな考えが頭をよぎる。何とも馬鹿げた妄想だ。だがそれは、なかなか私の頭の中から消えてくれない。流石にここまでネガティブな思考は、親友にも打ち明けられない。
 私の告白に、ミロは大きな瞳を瞬かせた。それから難しい顔をいて黙り込んでしまった。
 やはり、あんな話はするべきではなかった。
 感受性の強い親友は、私の話を聞いて自分のことのように胸を痛めているのだろう。ミロの手を乱暴に引っ張ると歩き出した。

「随分と道草を食ってしまったな。さて、急いで買い物を済ませて帰ろう。夕飯は、いつものパンでいいか?」

 ミロは頷き、ポトフが食べたいと言った。だからこの話はもうここで終わりだと思っていた。


 ミロの左手が、優しく頭を撫でる。右手はとんとんとあやすように腰のあたりを軽く叩く。

「ミロ、いったい何がしたいんだ?」

「ん?いや、乳を飲む子供を見ていると、自分が一時でも両親に愛されていたのか、考えてしまうとさっき言っていただろう。だったら、再現してみればいい。もしかしたら、赤ん坊の頃の記憶が蘇ってくるかもしれんぞ」

 なんと馬鹿げた提案だろう!!子供じみた思い付きに絶句する。 それなのに、さも名案だとでも言いたげにミロは頷く。
 こうなったら仕方がない。ちょっと付き合ってやれば気が済むのだ。
 突拍子もない親友の行動に呆れつつも、覚悟を決めた。
 男の、それも子供の乳首は小さい。とても口に含めるものではないが、取りあえず薄い胸に唇を寄せ目を閉じる。

「カ、カミュ…くすぐったい!鼻息が胸にかかる…」
 
 クツクツと笑いながら、ミロが身をよじる。

「コラ、乳を吸われてくすぐったいという母親がどこにいる」

 全く、誰のせいでこんな恥ずかしいことをしていると思っているんだ!自分の発言が発端であることは棚にあげて、ミロを睨むと漸く「ゴメン、ゴメン」と静かになった。
 全く馬鹿馬鹿しい。すぐ終わりにしてやる。
 気を取り直して、もう一度小さな乳首を唇で挟んで目を閉じる。
 唇を通して伝わる体温。脈打つ心臓。体つきは私の方が大きいというのに、ミロにすっぽりと包まれている感覚。先ほどまでの馬鹿にした気持ちは、すぐに消えていった。
 手を繋ぐのとも、ハグとも違う絶対的な安心感。ずっとこのままで居たいとさえ、思えるような。
 あぁ、そうか。
 過去の記憶とか、そんなものどうでもいい。両親に疎まれていても、この手が血に染まっていても。
 この温もりがあれば生きていける。私の居場所はここにある。私の親友。

「カミュ。どう?思い出せそう?」

 聞きなれたミロの声でさえ甘く感じる。
 恥ずかしい。これでは本当に赤ん坊になったようだ。
 照れた顔を見られたくなくて、わざとミロの髪をぐちゃぐちゃにかき回した。ミロから上がる苦情の声は聞こえないふりをした。

END

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