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腐った妄想の吐きだし口。 現在は聖闘士星矢の蠍座のミロのハマっております。
2025/05/23 (Fri)14:48
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2016/08/08 (Mon)00:33
…ノン、カノン。
 名前を呼ばれた気がして、重たい瞼を抉じ開けた。ぼやけた視界に金の巻き毛が映る。
 ミロも、こんな髪をしていたな。あいつはいまどうしているのだろう…。
「カノン、しっかりしろ。戻って来い」
 
 頬をペシペシと叩かれ、悪夢につかまっていた頭が一気に覚醒した。
 サガによって、スニオン岬に幽閉された後、俺は奇跡的に海界へと逃れ、海神ポセイドンを欺いて世界征服を企んだ。アテナと聖闘士たちに野望を打ち砕かれた後は、贖罪の道を探し一度は裏切った女神の元へとたどり着いた。聖戦の最中、ミロと再会も果たした。立派な戦士へと成長したミロは、赦しのスカーレットニードルを俺に打ち込み、聖闘士として、そして一人の男として認めてくれたのだ。
「み、ろ…。ミロか」
 
 蒼い大きな瞳が、心配そうにこちらを見下ろしている。最近出来た年下の恋人は、少々過保護なところがある。
「大丈夫か、カノン。酷くうなされていたぞ」
 
 ミロは水の入ったグラスを、手渡してくれた。一気に水を飲みほし、大きく伸びをした。部屋の中が薄暗い。双児宮の自室で、ミロが仕事を終えるのを待っているうちに、いつのまにやらうたた寝をしてしまったようだ。
「少々、夢見が悪かった」
「そのようだな」
 
ミロは隣に腰かけると、俺の頬に自分の頭を押し付けた。
「知っているか。悲しい時や落ち込んでいるときは、小さくて柔らかいものを抱くといいらしいぞ」
「お前のどこが柔らかくて小さいのだ」
「髪質だけは、癒し系だと自負している。カミュやシャカで実証済みだ」
 フフフ、と子供のように無邪気に笑うとミロは撫でろと言わんばかりに俺の手を自分の髪へと持っていく。モフモフとした髪は触り心地がよく、シャンプーの清潔な香りが鼻孔をくすぐる。夢の中とは違い、すっかり逞しくなった体をぎゅっと抱きしめる。ミロが傍にいてくれるのが純粋に嬉しい。
「とても恐ろしい夢を見たのだ。お前に忘れ去られてしまう夢だ」
 夢と言うよりは過去なのだが、幻朧魔皇拳で記憶を消されているミロはそのことを知らない。だが、それでもいいのだと、最近になって漸く思えるようになってきた。あのかけがえのない日々は俺がが一つ残らず覚えているから問題ない。それよりも、ミロがもう一度自分に恋してくれたことが嬉しい。
「カノン、もしもな。俺が記憶喪失になったとしてだ」
「ん?」
「おまえのことをきれいさっぱり忘れてしまったとしても、俺はもう一度カノンに恋をすると思う」
 突然の告白に胸が詰まる。ミロは驚いた顔をしている俺の髪をあやす様に撫でつけると、さも当たり前だというように口の端を吊り上げた。
「俺の魂が変わらぬ限り、求める物は同じに決まっているだろう」
 頬を温かい涙が流れた。その言葉が真実であることを、俺だけが知っている。
「結婚しよう」
 ごくごく自然に、その言葉は口から飛び出してきた。ミロは驚いて目を見開くと息を飲んだ。
「お前さえ良ければ、明日にでも女神と教皇に報告に行こう。双児宮はサガに任せて、俺はミロの元に嫁に行く」
「カノンが嫁なのか?」
「なんだ、その返事は。折角のプロポーズが台無しだ」
 おどけて肩を竦めると、ミロは「すまん」と謝罪した。
「嫁に来ると聞いて、俺はサガに殴られるのかと、そっちに意識がいってしまったのだ」
「やめてくれ、気持ち悪い。あの常識とやらに憑りつかれた愚兄のことだ、あまりの嬉しさに失神するかもしれんぞ」
 結婚の挨拶をしている最中に、サガの顔色が赤くなったり青くなったりする様を思い浮かべ、二人で額を合わせて笑い合った。
「あぁ、いっそのこと聖闘士も海将軍も寿退社して、専業主婦にでもなってしまおうか」
「ほう、新妻らしく白いフリルのエプロンでもするか?」
 ニヤニヤとミロが囃し立てる。俺はミロのふわふわした前髪を掻き上げると、額にキスをした。
「そうだ。お前が望むなら裸エプロンでもいい。新婚のお約束、『飯にするか?風呂にするか?、もちろん俺だろ!』もしてやるぞ。ベッドの中で蕩けるまで愛してやる」
「要らんよ。大男の裸エプロンなど、恐ろしいにも程がある」
「言ったな。では、俺が世界一裸エプロンの似合う男だということを証明しよう」
 もう一度ミロの額にキスをした。両頬、鼻の頭、顎、そして赤く色づいた唇に。愛しい者の体温を感じられる幸せを感じながら。

END


長いこと放置でしたが、女装カノンとチビミロさんのお話、これにて完結です。応援して下さった皆様、ありがとうございました。
八月いっぱい公開したのち、加筆修正して11月のパラ銀に出す予定なので取り下げます。
 10話と11話の間がかなり空いているので明日にでも纏めて支部にUPするつもりでいます。読み辛いと思った方はそちらをお待ちください。では。

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カノミロ~!!(*≧∀≦*)
お疲れ様でした!!(^o^)
語りたい事がいっぱい有ったのに!カノンさんだけ覚えてる過去と覚えて無いミロさんの台詞!!
過去を覚えてるカノンさんにとって、そのミロさんの台詞がどれだけ深く重く真実味の有る本気の言葉か!!素敵な言葉か!!
それを思うと、もう涙出そうな位ですよ~(*≧∀≦*)
カノンさん苦労した分本当に本当に良かったですねぇ(*≧∀≦*)
嫁入り宣言しながらしっかり左側キープ!流石カノンさんです(* ̄∇ ̄*)
もう二人が未来永劫新婚さんハッピーエンドで感無量ですよ(*≧∀≦*)
素敵過ぎるお話・結末ありがとうございましたヽ(*´▽)ノ♪
お疲れ様でした(^-^)
尾羽っSUN 2016/08/08(Mon)01:51 編集
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プロフィール
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春乃
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